南アルプス市「ふるさと文化伝承館(以下、みなでん)」着は午前10時半。この考古資料館を訪れるのは4~5回目であろうか?(後で確認したら4回目だった)。
「準勝手知ったる」的な先なので、すぐにエントランスに向かった。すると、入ってすぐにCOVID-19対策の特設テーブルがあり、ここで定番情報を記入し、その後検温。
入館料無料なのは事前にわかっていたので、すぐに女性職員さんに御朱印の記帳をお願いした。「札所巡りの方多いですか?」と私が聞くと「お陰様で、かなり増えてきました。面白い企画ですので…」という言葉が返ってきた。事前に予想はしていたが、残念ながら「みなでん」では「巡礼&ご朱印 第1号」達成ならずだ。
「みなでん」の巡礼対象は、8番「子宝の女神 ラヴィ」さんと9番「人体紋様付有孔鍔付土器」である。これはもう「王道(ど真ん中の豪速球)」の組み合わせである。
すぐに2Fの展示室に直行。展示室の中央にいつものように「ラヴィさん」の単独展示ケースがあったのだが、これまでと雰囲気がまったく違う、なんと、ラヴィさんが2体展示されていたのだ!
解説プレートを丁寧に読んでみたが、2体展示については何も触れていない。すぐに「レプリカと本物を並べて、どちらが本物かを当てる趣向だな。もうすぐ学芸員さんが説明にやってくるに違いない。」と閃いた。
そのためにも「本物のラヴィさんがどちらか見極める必要」がある。2体は見事な程にそっくりだが、お顔左側面の色(赤み)の掛かり方がちょっと違った。向かって右側は、いかにも土の焼け具合という感じがしたが、左側の方はちょっと樹脂っぽい不自然な赤みだった。
な~んだ、簡単じゃないか。向かって右が本物だな! そう確信して、人体紋様付や他の展示物の鑑賞に移った。
5分程すると、男性職員さん(おそらく館長さん)が近寄ってきて「今日は長野からわざわざ、ありがとうございます。」と声を掛けてくれた。見事な位に予想通りの展開である。
「ラヴィさん2体展示しているんですね。片方はレプリカですか?」と尋ねると、「ええ、そうです。本物はどちらと思われますか?」との質問が返ってきた。こっちはすべて想定済みの展開である。
自信たっぷりに根拠まで解説した上で「間違いなく向かって右ですね。」と答えたのは言うまでもない。瞬間、館長さんの表情が強ばったのを私は見逃さなかった。ほ~ら、間違いなく正解だ!
が、館長さんから返ってきたのは意外な言葉だった。「残念ながら本物は向かって左です。本当に精巧なレプリカなので外見からは違いがわからないのですが、右側は樹脂製ですので持つと重さがまったく違います。」
ガ~ン、ショックだ。大恥を掻いた。これも、180回近い縄文考古館探訪の旅で「初の体験」である。考古学者にならず、銀行アナリストを生業としたのは正解だったようだ…
ショックから立ち直れないまま、土偶さんや土器を呆然と見学し続けた。気が付いたら入館から25分が経過。
1Fに移動して御朱印帳を受け取った。その後、ミュージアムショップで「みなでん」のトートバッグと絵葉書、それにラヴィさんのお顔のレプリカを購入。本物とレプリカの見分けが付かなかった戒めとして、時々、ラヴィさんのお顔を眺める事としよう…
入館料無料の考古資料館に対する仕来りも無事に完了。滞在時間はちょうど30分間になっていた。
こうして、三十三番土偶札所巡り4日目(6月7日)の旅は終わった。残すのは、4つの考古資料館と8つの札所(土偶さん・土器)のみだ!