私は仕事柄、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が運営・提供する「RESAS(地域経済分析システム)」を頻繁に利用する。
我が社のお客様である「地域銀行」の分析をする際に、経営地盤である地元経済に関する様々なデータを活用する事は欠かせないからである。
だが、RESASは仕事だけに用途が限られたものではない。
「地方への移住」或いは、私のように「デュアルライフ(二拠点生活)」を志向する者にとって「極めて有益な情報の宝庫」でもある。
1999年に八ヶ岳界隈で「第二の拠点」探しを本格化した際に、自分で思い付く可能な限りの情報を徹底的に収集して分析した。
「各市町村」の気候や過去の歴史のみならず、人口動態や産業構造、財政状態、活断層の存在等々、実に様々なものを含んでいた。
特に、重視したもののひとつに「市町村の財政状態」があった。
バラマキ的政策をしている自治体は、移住検討者の目には魅力的に映るかもしれないが、個人も地方自治体も理屈は同じである。
「自分の稼ぎに見合わない支出を続ける事なんて基本的には不可能(無理)」なのだ。
結局、財政が不健全な市町村は、長期的に見れば、行政サービスの低下(悪化)のリスクが大きくなる。
「市町村の統廃合」が起きた場合の「悲哀」なんてのは、生まれ故郷の町で起こった混乱(悲劇)を父母から聞いて、絶対に避けたいと考えた。
そんなわけで、当時は様々なデータをかなり手間暇掛けて集めて、八ヶ岳西南麓界隈の市町村の財政状態を私的に「信用格付」したのである。
今だから言えるが、その結果、かなり早い段階で「第二の拠点」の候補地から脱落した町村がいくつかあった。
面倒な作業ではあったが、八ヶ岳界隈の市町村について深く学ぶという意味では「貴重な経験」だったと考えている。
だが、RESASが2015年4月からサービスを開始するようになってから状況は様変わりした。
20年以上も前に私が手間暇掛けて収集・分析した情報が、いとも簡単に、かつ、ビジュアルに(勿論、無料で)誰でも利用できるのである。
これから、移住先や第二の拠点探しをする方には、是非、RESASの活用をお奨めしたいと思う。
じゃあ実際に、どんなデータを得る事が出来るか、参考事例をひとつだけ示そう(勿論、これ以外にも実に様々なデータが収録されている)。
当時、私が最も重視した指標のひとつが「個別市町村財政力指数」であった。
この指標を真面目に表現すると「基準財政収入額を基準財政需要額で除した指数」である。
財政力指数が1.0を上回れば地方交付税交付金が支給されない不交付団体(優等生)となり、下回れば地方交付税交付金が支給される。
まあ簡単に言えば「基本的には、財政力指数が高ければ高い程、地方自治体の財政の健全性が高い(財源の余裕がある)」のである。
長野県では「軽井沢町」が、常に全国の市町村の中でもトップクラスにある事が知られている。
では、RESASで、八ヶ岳界隈の市町村の「財政力指数」がどのように表示されるかを実際に示してみよう。
RESASの凄い所は「ヒートマップ」で財政力指数の高低をビジュアルに示してくれる点だ。
下記のヒートマップ表示は、最新2019年度基準である。↓
基本的に「色が濃い(薄い)市町村の財政力指数が高い(低い)」事を示している。
そして、各市町村の上にカーソルを置けば、具体的な計数も表示してくれる。
例えば、我が第2の拠点である「富士見町」は0.56である。
個人的には0.50以上である事にひとつの重きを置いているので、まあ「及第点」だ。
周辺の市町村を参考までに示すと「諏訪市 0.74」「茅野市 0.61」「原村 0.40」「北杜市 0.44」である。
もう少しエリアを拡大すると「岡谷市 0.65」「下諏訪町 0.60」「塩尻市 0.65」「辰野町 0.49」「蓑輪町 0.63」「伊那市 0.49」「韮崎市 0.74」となる。
市町村によって、かなりの格差がある事がわかるだろう。
ちなみに「軽井沢町 1.66(相変わらず素晴らしいな!)」なんて、トンデモ優等生も存在する。
勿論、市町村の財政の健全性を評価する際には、財政力指数以外にも、将来負担比率、実質公債等比率等、他にもいくつかの指標がある。
だが「財政力指数」がその「代表」である事は間違いない!
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私は「後悔」という言葉が大嫌いで、基本的に「後悔」はしない。
そして、「後悔」や「失敗」のほとんどは「事前調査の不足」が引き起こすと考えている。
「移住」や「デュアルライフ」希望者に対して「美辞麗句」だけを連ねる「市町村」や「不動産業者」等を安易に信じてはならない(ブログなんかもそうだよな…)。
本当に価値があるのは、敢えてネガティブ情報も伝えてくれる「情報源」なのである。
そして何よりも重要なのは「自分で調べて、自分の頭で考えて、自分で判断する事」だ。
RESASは、そんなあなたの「強い味方」になってくれるだろう。
※ 昨日、東京で仕事をした際に、知人から、八ヶ岳界隈でのセカンドハウス購入(将来的には移住も有り得るとの事)に関して相談を受けた。私が知らない内に『八ヶ岳稿房』の読者になっていたらしい。時間に余裕がなくて、大切なメッセージを十分に伝える事が出来なかった。その補足として、この「投稿」は、私としては珍しく、結構「真面目」に書いてる。