私にとって「デュアル・ライフ」の最大の意義は「リスク分散」にある。
日本列島は「自然災害の坩堝」だ。
特に「東京」は、英ロイズがかつてケンブリッジ大学と共同で世界279都市を対象に試算した紛争や災害の脅威リスクおいてダントツの1位(最悪)であった。
そんな東京を核とした「首都圏」のみを「単独の生活拠点」とするなど、慎重で臆病な性格の私には耐えられない。
じゃあ「八ヶ岳」が「安全な地」かというと、全然そんな事を考えたことはない。
そもそも「糸静構造線」が走る地域である。
風水害や雪害、火山噴火等々、リスクファクターを列挙したらキリがない。
別に首都圏や八ヶ岳に限った話ではなく、基本的に、日本中に安全な場所など存在しないのだ。
だからこそ、複数の生活拠点を持ち、両拠点の「共倒れ」を防ぐことが、人間に出来る有効なリスク管理手段のひとつだと私は考えている。
だが、2拠点体制を構築しても、一方の拠点が壊滅的な被害を被った際に、もうひとつの拠点があまりにも離れた場所にあったのでは「疎開」もままならなくなる。
私が、八ヶ岳の拠点を探す時に「車で2時間以内」にこだわった理由は、「疲れない通勤時間」というファクターの他に「いざという時の疎開の確実性」もあった。
八ヶ岳本宅が気に入った理由のひとつは「中央道IC」や「中央本線の駅」から何とか歩いて行ける場所だった事もある。
大災害があった場合、こういった基幹道路や基幹路線の復旧が最優先されるのが常である。
小淵沢ICまでは約9km、富士見駅までは約7km。
歩けば1時間半~2時間で辿り着くことが出来るだろう。
私の場合の「安全保障」の範囲は、私と社主さま(家内)、それに今ならば、三人の息子達とそのお嫁さんに限定した狭い(セコい)ものだ。
だが、人間「自分の家族のことは自分で守る」というのが基本である。
いざという時に、地域コミュニティー、市町村、国家に頼るなんて「甘過ぎる考え」なのだ。
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こういった「リスク分散効果」という土台を築いた上で「それぞれの拠点の固有の楽しみを存分に味わう」というのが「デュアル・ライフ」の醍醐味である。
要は、それぞれの拠点の「イイとこ取り」をエンジョイするわけだ。
だとすると「過酷な冬をわざわざ八ヶ岳で過ごす理由」って何なのかな?
私は、スキーやスノボといったウィンタースポーツとは無縁なので、そういった八ヶ岳の冬固有の楽しみはない。
経済合理性や快適性を考えれば「夏は八ヶ岳」「冬は新百合ヶ丘自宅」で過ごすのが間違いなく賢い。
仕事という観点からは、かつては八ヶ岳オフィスの方が優位性があったが、昨年実施したBPRで自宅での仕事環境を大幅に強化したので、今やほぼ「互角」である。
敢えて「冬の八ヶ岳」を訪れる理由をしばし考えてみた。
やっぱりオフィスや本宅の窓から見る「冬の森の様子」も好きなんだな…
ああっ、加えて八ヶ岳ブルーの空の下、純白の雪に覆われた庭の様子を眺めるのも最高だな。
それに、何の痕跡もない雪の上に自分の足跡を残していくのは爽快だ。
そうか、野鳥達で満員御礼状態の給餌台を観察するのも「冬季限定」の楽しみだよな…
うん、これだけの理由があれば十分だ!
by『八ヶ岳稿房主』