「ふるさとは遠きにありて思ふもの」というフレーズは、確か室生犀星の詩「小景異情」の一節だったかな…
昨日の私は、朝から生まれ故郷の南房総市で所用があった。
現在、入院中の私の父のケアマネさんと、午前10時から実家で会って、諸々の手続や相談をする予定が入っていたのである。
のんびりとかマッタリは性に合わない私であるが、一昨日に八ヶ岳から戻ったばかり。
しかも、南房総行きは7月になって二度目である。
正直、あまり気乗りしない予定であった。
幸い、昨日が休暇であった三男が彼の車での同行を快諾してくれた。
往復約300kmの運転をしなくて済むのはありがたいな…
と、ちょっと気分も楽になり、朝の6時半過ぎに新百合ヶ丘の自宅を発った。
私は、はっきり言って、あまり生まれ故郷が好きではない。
「周波数が合わない」といった感じなのだ。
自然の恵み豊かな半農半漁の町なのだが、どうも雑然としていて、新百合ヶ丘や富士見町のような清潔感がない。
人も空気もベタッとした感じで、それが煩わしい。
温暖の地特有の「あくせくしなくても、まあ何とかなるだろう感」が蔓延している。
スーパーやコンビニのレジ打ちの遅さを見ていると苛々してくる。
2019年の台風19号で被災した後も、屋根をブルーシートで覆っただけの家屋が長期に亘って、かなりの数あった。
冬の寒さが過酷な八ヶ岳界隈(信州)では考えられない光景だ。
おそらく、そういった「おおらかさ(鷹揚さ)」を好む人には、堪らなく魅力的な地であろう。
でも、私はそれが駄目なのだ。
社主さまは「あなたは南房総に来ると、いつも苛ついているわね…」と笑うが、実際はもっと深刻だ。
滞在中に、どんどん生命エネルギーを吸い取られるような感じがして、どっと疲れるのである。
————–
昨日は、そんな「典型的な日」だった。
ケアマネさんとの所用を済ませた後は「お墓参り」をする予定だったので、まずは朝9時からオープンする「道の駅」を2カ所回った。
お花や農産物、海産物を購入して、私の計画通りに事は運んだ。順調な滑り出しであった。
だが、そこからは「トラブルの続出」。
父が入院中に届いた郵便物等の関係で、要対応案件は増える一方。
ケアマネさん関連の手続をどうにか30分程で終えて、お墓参りをすることになった。
実家は、隣が「神社」、前が「お寺」という特殊な立地(神仏習合だな…)にあり、お墓までは徒歩で2分。
だが、お墓に向かって歩き出した途端に土砂降りの雨となった。
傘を差しながらお墓参りをすると、今度は大嫌いな「蚊」の波状攻撃を受けた。
八ヶ岳オフィス周辺には蚊は生息していないので、ついつい油断して「虫除けスプレー」を使わなかったのだ。
お墓参りを早々に終えて、まるで、追い立てられるかのように実家から撤退。
車の中で数えたら、わずか10分程の間に11カ所も蚊に刺されていた。あ~あ、最悪だ (>_<)
その後、郵便局や銀行等々を回って、着実に要対応案件を潰して行った。
だが、雨は激しくなる一方。
11時半頃には、対応可能な要件はすべて処理を終えて、ランチへ。
だが、食事を予定していたお店は何故か「臨時休業」。楽しみにしていた「なかパン」も休業日。
オイオイ、どれだけツキがないんだ…
結局、お店のすぐ前に駐車できる地場の開店寿司店で簡単にランチを済ませた(味気ないな)。
さあ、南房総から撤退だ!
だが、風雨は強まる一方。
館山自動車道手前の「椰子並木」では、風雨で落下した椰子が至るところに散乱。
こんなのが車を直撃したらと想像するとゾッとした。
結局、「海ほたる」までは、風雨の中の「撤退戦」。
正に『敗走』であった。
一息ついたのは、海ほたるの「IDEBOK」で大好物のソフトクリームを味わった時だ。
ふと思った。
ああっ、生まれ故郷も私のことが嫌いなんだな…
by『八ヶ岳稿房主』