八ヶ岳 最近の「宅地開発」に対する違和感 —自生する広葉樹は宝物!

鉢巻道路、エコーライン、ズームラインといった八ヶ岳山麓を網の目のように走る道は、私にとって「生活道路」である。

D4でノンビリと優雅に走行していると、住宅(セカンドハウス)建築のために樹木が伐採された土地が多い事にちょっと驚く。

東日本大震災の後にもそんな動きがあったように記憶しているが、今回はその比ではない。

八ヶ岳を第2の拠点として早22年目を迎えたが、今年に入っての「宅地開発ブーム」は、私が知る(感じる)限りでは「過去(平成以降)最大」である。

個人的には、これから加速度的な人口減少、特に「生産年齢人口」の急減が避けられない我が国は「1世帯2つの持ち家、1人1社の会社設立(国民皆社長)」みたいな政策が必要だなと考えている。

そういった意味では「歓迎すべき動き」であると思う。

だが「樹木(立木)の伐採」の仕方がちょっと気になる。

「情け容赦ない」という言葉がピッタリと思えるような「根こそぎ型全伐(皆伐)」があまりにも目立つのだ。
————-

かく言う私も、これまで3回、八ヶ岳の敷地内で業者さんに依頼して大規模な木の伐採を行った。

1回目が本宅購入時、2回目がオフィス建築時、3回目が今年の1月である。

1回目の時は「1本1万円」という格安料金だったので例外だったが、2回目と3回目は複数の業者さんに見積もりを依頼した。所謂「相見積」である。

勿論、伐採料金を低く抑えることが主目的であるが、もうひとつ大切な「理由」があった。

「伐採すべき木と残すべき木の峻別(の相談)」である。

これについては1回目の伐採の時も同様だった。

実は、本宅を購入した際にお世話になった不動産屋さんから授かった「知恵」のようなものがあった。

敷地内の樹木の伐採については、依頼側が事前に伐採予定の木を決めて(固めて)あると、業者さんはそれに従った見積もりを単純に出してくるのが普通なのだそうだ。

だが、伐採する木の選定の段階から相談すると、切るべき木、残すべき木等について、参考になる様々な情報を与えてくれるとの事だった。

だから3回の伐採のすべてで、事前立ち会いの際に、絶対に切ると決めた木以外については、業者さんの「本音ベースの意見」を聞いた。

これが本当に参考になったのである!

全般的な傾向としては

①どの業者さんも植林された「赤松」や「唐松」の伐採については、元々、「伐採をするための木」という感覚で抵抗感はないようだった。特に、赤松の樹形がいびつ(幹が二股等)な木については倒木のリスクが高いという事で、かなり積極的に伐採を勧められた。建物に近い位置にある木(松)については「躊躇なく伐採すべき」との業者さんもいた。

②対照的に、元々、自生していた広葉樹については「この木は紅葉すると綺麗だよ。」とか「珍しい樹種だから残しても面白いんじゃない…」といった参考意見をくれた。私には「雑木」としか思えない木も少なからずあったので、正直、意外だった。

③ナラ系の大木については「この木は切ったら勿体ない。」とか「長く生きた木だから大切にした方が良い。」と言って、伐採すべきではないと教えられた(諭された)木もあった。

まあ、そんな経験もあり「自生している広葉樹の大切さ」のようなものを業者さんから学ぶ事が出来たのである。

よく考えたら、これは「柳生 博」師の「八ヶ岳倶楽部の雑木林」のコンセプトと相通ずるものがあった。

我が家の敷地内には、業者さんのアドバイスで伐採を免れた広葉樹がかなりの数ある。

ナナカマド、ウワミズサクラ、ブナ、山栗、リョウブ(株分かれしてあんな素敵な木になるとは思わなかった)等々の広葉樹である。

リョウブの木は本宅購入当初は、ただの「雑木」にしか見えなかった。株分かれしてこんなに美しい木になるなんて想像できなかった。伐採しなくて本当に良かった…

特に忘れられないのが2本のナラの木だ。

1本はオフィスに最も近い場所、もう1本は隣家との境界線上にある。

どちらも「最有力伐採候補」だったのだが、どの業者さんにも「良い木(大切にすべき木)」なので伐採しない方がよいと言われた。

敷地内ではオフィスに最も近い「ナラの木」。オフィスをセルフビルドする際の伐採候補のひとつであったが、業者さんの意見を参考にして伐採するのを止めた。
幹回りは約2.3m。我が家の敷地内では1番の大木だ!

隣家との境界線上の木については、お隣さんが伐採見積もりを依頼した別の業者さんも、ほぼ同じような意見であったらしい。

そこで合意の上で伐採しない事に決めて今日に至っている。

こちらが隣家との境界線上のナラの木。こちらも本宅購入当初は伐採候補の内の1本だったが、お隣さんも同意見で伐採しない事になった。
こちらの幹回りは約2.1m。敷地内で2番目の大木だ。

幹回りを計測してみたら、オフィスに近い木は2.3m程度、境界線上の木は2.1m近くあった。

我が家の敷地内で1位と2位の「巨木」である。

これらの広葉樹は、四季折々、様々な姿で私の八ヶ岳ライフに潤いと安らぎをもたらしてくれている。

敷地内の広葉樹を伐採してしまっていたら、こんな素敵な「雪の華」の光景を楽しむ事は出来なかった・
勿論、紅葉の時期の広葉樹の美しさも格別だ!

今年1月には敷地内で計11本の大木を伐採した(https://triglav-research.com/?p=29909)。

対象は赤松が中心であったが、残念ながら一本だけ「白樺」も伐採した。

敷地内で最も大きな白樺だったのだが、根元から木材腐朽菌が侵入していたようで伐採せざるを得なかったのである。

いざ伐採してみると、既に幹の一部が空洞化していた。

悲しかったけれど、伐採の決断が正しかった事が確認できた。

最近、ちょっと嬉しい事があった!

1月に伐採した白樺の根と幹から「萌芽更新」の「蘖(ひこばえ)」が育ち始めているのだ。

1月に伐採した白樺の幹から蘖が育ち始めている。広葉樹の生命力の強さに感動する。
幹だけではなく、伐採した根元からも蘖が育っている!
「ここに白樺の蘖があるよ!」とまるで私に知らせてくれるかのように、キクイモの花が一輪だけ咲いていた。

この蘖を敷地内のどこで、どう育てようか、現在「楽しい思案中」なのだ…

 

私は大袈裟ではなく「八ヶ岳の地に自生している広葉樹は宝物」だと考えている。

ゆえに、そんな広葉樹も根こそぎ伐採してしまう最近の八ヶ岳界隈の宅地開発に、ちょっと「違和感」を覚えるのである。
———————-

我が家の長男が、昨年、八ヶ岳本宅から歩いて7~8分の場所に土地を購入した。

以前に建っていた別荘が撤去されて10数年が経過しており、現状は「雑木林」に近い状態となっている。

先日、社主さまと「雑木林の夏の状態」を視察に行った。

約440坪の敷地は、正に「広葉樹の宝庫」だった。

息子がこの土地をどのように活用するかは定かではない。

だが、家を建てる事になった際には「根こそぎ全伐」なんて「無粋」な事は、絶対にさせないぞ! と心に誓った。