八ヶ岳オフィスの窓から見下ろせる位置で営業中の「野鳥さんレストラン3号店」。不要になったパラボラアンテナを改造し、広葉樹の切り株に設置した「異形のレストラン」であるが、開店以来、ほぼ「満員御礼」の状態が続いていた。
デスクワークで疲れた時に、窓から見下ろすと野鳥さん達がヒマワリの種を啄んでいる光景を目にする事が出来る。アークヒルズ、城山ヒルズ、六本木ヒルズ等々、東京の色々な高層ビルのオフィスで働いたが、こんな楽しみを味わえるのは八ヶ岳オフィスだけである。
この3号店、昨年12月に2回、改装工事を行った。1回目は、果実を串刺しにするためのアンカー設置。これは、ヒマワリだけでなく果実を好む野鳥さんにご来店いただくための改装だった。
メインターゲットは春先の「メジロ」さん。まだ、メジロさんご夫婦のご来店の季節ではないが、リンゴを置いてすぐに「ヒヨドリ」さんの貸し切り予約が入るなど、改装後も相変わらず繁盛が続いていた。
2回目の改装工事は、昨年12月28日。透明のアクリルケースを追加で設置し、お洒落な2階建て構造のレストランに仕立てあげた。
1階はヒマワリの種目当て、2階には果実系のお客様にご来店いただく事を目論んだのである。アクリルケースには、雪が降った際にヒマワリの種が埋もれてしまうことを防ぐ効果も期待した。
山盛りの種と大きなリンゴを突き刺して八ヶ岳オフィスを後にしたのは12月30日早朝。だが、1月4日に初出社して異変に気が付いた。1号店と2号店は、リンゴもヒマワリの種も跡形もない状態だったのだが、3号店は30日に置いたヒマワリの種が半分以上も残っていたのだ。
こんな事は、野鳥さんレストラン開店以来初めての「異常事態」である。そこで、2階建てレストランのどこが野鳥さん達のお気に召さないのか、数日観察してみることにした。
ヤマガラ、シジュウカラ等の「カラ」系お客様は、相変わらずそれなりの数、ご来店いただくのだが、アクリルケースとパラボラアンテナが接しているため、その圧迫感に戸惑っているような感じだ。
また、周辺の木々の枝からレストラン目がけて飛んでくる際に、アクリルケースの脚部にぶつかりそうになる野鳥さんもいた。
さらに、何故か、集団で飛来してヒマワリの種を大量消費する「イカル軍団」がまったく姿を見せない事に気が付いた。だから、ヒマワリの種がなかなか減らないのであろう。
イカル軍団は食べ放題のお店を占拠する「体育会系学生」のような存在なので、カラ系の野鳥さん達がじっくりと食事を楽しむという意味では良いことかもしれない。でも、完全不在はちょっと寂しい。
そんなわけで、昨日のお昼過ぎ、ちょっとした空き時間に「3号店の3回目の改装」を実施した。オフィスの地下室から、改装に使えそうな細々とした部材を探して来て、ドリルでアクリルケースを再加工。
アクリルケースを受け皿の上に浮く形とした上で、アンカーをもう1本追加で付けて、果実系の好みのお客さんも引き続き集客できるよう工夫。まあ、1階をオープンカフェスタイルの2階建てレストランに改装したって感じかな。
作業時間は20分。改装後、昨日の午後、何回も窓から眺めたが、客足が回復する気配はなかった。ああっ、やっぱり一度悪い評判が立ったお店には、簡単にお客さんは戻ってこないんだな… 私の「気紛れ」としか言いようのない2回目の改装工事を後悔した。
今朝も6時前に目覚め、真っ先に3号店をチェック。たが、早朝という事もあり、客足が戻ったかどうかはよくわからなかった。
8時から仕事を始めて10時前に、また窓から様子を眺めた、ん?? カラ系のお客さん達が次から次へと飛来しているぞ! 明らかに昨日までとは様子が違う。アクリルケースと受け皿の間に出来たスペースを自由気ままに動き回っているではないか!
そして、午後2時過ぎ。ついに「イカル軍団」が3号店にやって来た。だが、これまでのように何羽も群がってヒマワリの種を奪い合うような事はなく、1羽ずつお行儀良く種を啄んでいる。
順番待ちのイカルが近くで待ち構えており、まるで「イカル軍団」がカラ系のマナーの良さを真似しているかのようで、思わず微笑んでしまった。どうやら浮いた状態のアクリルケースが邪魔で「集団暴食」が出来ないようだ。これは意図せぬ効果だぞ!
賑やかなイカル軍団が飛来したためか、ヒヨドリ、カケス、アカゲラまでもが、3号店周辺の広葉樹の木々に集まり始めた。
やったぞ! 3回目の改装工事は大成功だ。