「整理・整頓」は私にとって、趣味のひとつのようなものだ。仕事場である八ヶ岳オフィスが、常にスッキリと片付いているのは当たり前である。
弊社設立前、サラリーマン時代に働いた会社の数は、国内金融機関が4社(中央銀行を含む)、外資系金融機関が4社で、すべて「調査部門」である。どの金融機関でも、社内に置いてある資料の少なさでは、私が1番だったと思う(よく考えたら、某外資系で働いた時に、もっと上手の軽量派が1人いた…)。
調査部門で働く人達の多くは、デスク(或いは個室)周辺に山のように資料を積み上げている。私の場合は「迷ったら捨てる」派なので、そもそも資料があまり溜(貯)まらない。
本当に大切な資料は、気が向いたらいつでも別の会社に移籍できるように、自宅にデータ化して保存する主義だったので、そもそも初めから会社に置いたりしない。
そんな事が出来るのかと思うかもしれないが、ちゃんとしたノウハウがある(勿論、コンプライアンス上、問題の無い方法だ)。
「極意」や「奥義」の類なので、誰にもその方法は教えない。「小鉢男」とは、そういうものなのである。
会社に置く資料が少ないと不便ではないかとよく尋ねられたが、捨てた資料がどうしても必要になった時は、資料を常に沢山抱えている(心優しい)人の所に行って、借りたり、教えてもらえばよい。それだけの事だ。
では、何でも「迷ったら捨てる」的な淡泊さで接するかというと、そうではない。「機能性と美しさ(機能美)」に惚れ込んでしまうと、逆に、そのブランドの製品を長年に亘って収拾してしまう「(悪い)癖」がある。
ほとんどは、文具や皮革製品(例えば、MONTBLANCの筆記具・皮革製品やTRIMのコードバン製品等々)だ。実際に使用する喜びもあるが、丹念に手入れをする(愛でる)幸せも感じてしまう性格なのでコレクションの数は確実に増えて行く。
文具や皮革製品は嵩張らないので、数が増えてもどうという事はないのだが、これが「鞄」になると話が違ってくる。
実は、もう十数年も「嵌まってしまっている」ブランドがあるのだ。ドイツの「RIMOWA」である。
あれは、現在のように国内出張が主体ではなく、年に何回も「海外キャラバン出張」が組まれていた頃の事だった。ロンドンのヒースロー空港で、見慣れぬ黒いポリカーボネート製のスーツケースを颯爽と(軽やかに)引いている外国人ビジネスマンを見かけた。
私から2m程の場所で急に立ち止まり、スーツケースの外に付いている大きなポケットに手を入れてノートPC(Dynabook)をサッと取り出したのである(とてもスマートな所作だった)。
それまで、見た事のないタイプのスーツケースだったので、ちょっと近付いてブランドをチラ見したら、ポケット部分に「RIMOWA」とあった(Lufthansaのエンブレムも付いていた)。アルミニウム製のRIMOWAのスーツケースの事は、勿論知っていたが、ポリカ製でポケット付きのRIMOWAに出会ったのは、その時が初めて。
出張から戻ると、記憶を頼りにRIMOWAのHPを検索。ヒースロー空港で出会ったスーツケースが、「Bolero(ボレロ)」シリーズである事が判明した。
海外出張用のスーツケースが、ちょうど、かなりくたびれていたので、すぐに1週間位の出張に使えそうな大型を購入。最近は出番が減ったものの、現在も「現役」である。その後、出張が長期の海外から、短期の国内に変わるに連れて、使う(=購入する) Boleroも徐々に小型化。
途中から、アルミニウム製のパイロット・ケースやアタッシュケースの機能美にも惹かれるようになり、気が付けば、かなりの数のコレクションとなっていた。
海外旅行(出張)に使える大型2個は川崎自宅の屋根裏収納、社主さまに献上した1~2泊用2個(BoleroとSalsa)はWICが収納場所である。一方、私が頻繁に使う中小型モノは、川崎自宅書斎と八ヶ岳オフィスに分散して保管。ここ数年は、出張の都度「入れ替え戦」を行い、交互に出張時の登板機会を与えてきたのだ。
だが最近、八ヶ岳オフィスの広さに慣れたためか、川崎自宅の書斎を手狭(窮屈)に感じるようになってきた。広さが八ヶ岳オフィスが延べ約25畳あるのにして、川崎自宅はクローゼット込みで6畳弱なので、これは致し方ない。
そんなわけで、今回、川崎自宅書斎に置いてあった「RIMOWA」5個をすべてD4で運んできたのである。積みっ放し状態である事に気が付いたのが、今朝の朝食後。すぐに、オフィスに運び入れた。
そして、オフィス保管分と合わせて並べてみた。こんなにあった(買った)っけ??
Boleroとアルミ製を合わせた数は9個。大型スーツケースと社主さま分を合わせたら「13個のRIMOWA」だ! 改めて、「嵌まった(惚れ込んだ)」場合の自分の怖さ(執着心)を知ったような気がした。
でも、丁寧に手入れ(メンテナンス)しているので、どれも状態はとても良い。このRIMOWA達、もしかしたらとっても幸せなんじゃないだろうか…
幸い、私には3人の息子がいる。三男は地方公務員なのであまり出張はないだろうが、長男と次男は「銀行員」である。やがて、出張で飛び回るような部署に配属されるかもしれない。
「彼らのために、私が一生モノのRIMOWAを地道に買い集めているのだ。なんて息子思いの良い父親だろう…」と、自己正当化。 繰り返しになるが「小鉢男」とは、そういうものなのである。
RIMOWA 大好き、My favorite things !