小諸ツリーハウスプロジェクトの見学・鑑賞ツアーは、いよいよ最後(7軒目)の『又庵(ゆうあん)』を残すのみとなった。
『間』起点とし、時計回りにツリーハウスが点在するスペースをほぼ1周した場所に又庵はあった。デザイナーは「古谷誠章」氏である。
小諸ツリーハウスプロジェクト全般に言える事だが、ツリーハウスの設置場所はあまり高くない。メジャーを持参して計測したわけではないが、bird-apartmentを除けば、地面から2~3.5m程の高さにハウスの床部分があるように思う。空を見上げるような位置にある「空飛ぶ泥舟」や「高過庵」とはこの点が大きく異なる。
私は重度の「高所恐怖症」なので、『間』や『チーズハウス』程度の高さであれば恐怖感を覚えずに「樹の家」の雰囲気を楽しめるなと感じていた。
遠目に『又庵』を眺めた。『間』よりもやや高度はありそうだ。もしかすると、この位の高さが、私にはちょうど良いのかもしれないな…
近付いて下から鑑賞。ん? これはもしかすると日本酒や醤油を醸造する樽の再利用部材かなと思った。だが、底(床)板の形状が複雑な曲線を描いているのにすぐに気付いた。このツリーハウスも凝った作りである。
脇に回って構造を見た。複数の広葉樹に包まれるようにハウスの筐体がフィットしている事がわかった。これが周辺の樹木との一体感を生み出している。
ところでこの樹は何だ? bird-apartmentのブナ(勝手に判定)によく似ているが、樹皮の剥がれが目立つし、葉先の尖りが目立つので「欅(ケヤキ)」のような気がするぞ…
出入り口を下から覗く。ステップはしっかりした作りで安定感がある。ハウスの荷重を支えるために周辺の広葉樹を挟み込む形で金属製の黒い支柱が何本も通っている。武骨な作りなのだが、不思議と違和感はない。
ステップの下部の支柱を詳しく観察。広葉樹の幹にやや食い込んでいるのは。ハウス設置後に樹が生長したためであろうか?
樹の幹に穴を開けて、ボルトを通して2本の支柱で挟み込んでいるのかと予想したのだが、ボルトらしきモノが見当たらない。どうやって支柱を固定しているんだ? 考えたが答は見つからなかった。
『又庵』は色々な意味で「不思議なツリーハウス」である。そもそもコンセプトは何なのだろう?
Webの解説文には「又庵は、樹齢 130 年の吉野杉原木から製材された杉の柾目材を使い、人々が手塩のかけた豊かな森と食の世界を結び合わすためにデザインされました。 床面の広さはちょうど一畳台目の茶室に等しく、都会の喧噪を離れた清々しい緑の中で、ひととき樹上にたゆたう『木漏れ日の茶事』を開いて、遠来の客人をもてなせるように構想しています。」と記されていた。ああ、茶室が基本コンセプトなんだ。恥ずかしながらやっと気が付いた。
さらに「名前の由来は、株立ちの欅の木の又に結んだ庵 (いおり) であり、人が又再びここを訪れたいと思ってくれるようにと考えたものです。さらには、利休好みの名茶室である京都上京の『又隠 (ゆういん)』へのオマージュでもあります。」とも書かれていた。う~ん、欅の見立ては合っていたが、「又隠」なんて知らないぞ。まだまだ教養不足だなと反省した。
こうして、「ツリーハウスへの途 小諸ツリーハウスプロジェクト編」は7軒すべての見学を終えたのである。
【縄文土偶探訪記】の土偶さんとの出会いは、純粋な感動とパワー(元気)をもたらしてくれるが、ツリーハウスの見学・鑑賞は、私の感性や知性が試されるようで、また違った楽しみがある。
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