冬の訪れ。人によって、感じ方は様々であろうが、私には明確な基準が存在する。第1は、唐松の落葉が完全に終わって、敷地内に降り注ぐ「黄金のシャワー」を堪能できなくなることだ。21日から27日まで、千葉の実家に帰ったり、東京での仕事をこなしたりで、八ヶ岳オフィスを1週間留守にした。前回滞在時は、まだ黄金のシャワーの残滓が感じられたのだが、昨日の朝、オフィスに戻ってみると、唐松のまるで「針」のような葉は、すべてが地面に落ち、茶色のカーペットに変わっていた。
今日の八ヶ岳オフィスの午前10時の外気温 8.2℃。例年よりもかなり暖かい。空気は相変わらず澄み切っており、爽快で凛とした「冬の朝」だ。だが、敷地内を散策すると、至るところに「霜柱」が立っている。
オフィスのドアには、テニスプレイヤー 兼 リース作家である弊社社主(家内)が作ったリースが掛けてある。敷地内で拾った赤松と唐松の松ぼっくりやシンボルツリーである「樅の木」の枝、ワインのコルク栓等を用いて作成するのだが、年々、人気が高まりつつあるらしい。今年は売れ残りしかオフィスに回ってこなかった。家内に「トリグラフ・リース工房」でも運営させようかなと半分本気で考えている。
話を元に戻そう。私的「冬の訪れ」第2の基準は、敷地内の木々に「鹿の食害対策」を施すことである。八ヶ岳周辺の別荘地においては「鹿との戦い」を避けることが出来ない。冬になって餌が欠乏した鹿サン達が群れをなして襲来し、大切な庭木の葉を食い尽くし、樹皮を囓っていくのだ。八ヶ岳の庭も、当初計画では、「コニファー・ガーデン風」に仕立てるつもりで、購入した年にかなりの数を植えたのだが、最初の冬に鹿サン達の食害で全滅した。その後も、桜や楓、果樹系と悉くやられた。
鹿の食害対策には様々なものがある。敷地をフェンスで囲う、鹿除けネットを木々に巻く、鹿除け剤(狼の尿など)を撒くなどだが、トリグラフ・リサーチ流は、ちょっと変わっている。100均ショップで売っている「銀色のアルミ・タンスシート」を鹿サンの大好きな樹木の幹に巻き付けるのである。
これは、オリジナル・アイデアではない。10年程前に、有効な鹿対策はないかとネットで探し、辿り着いた手法なのだ。極めてシンプルな方法で、木々が完全に落葉した後に、根元から鹿が届きそうな位置までタンスシートを巻き付け、芽を吹く前に取り払う。ただ、それだけだ。まあ、樹木が休眠中に銀色のお洋服を纏わせると考えればよい。「こんなもの、本当に効くのか?」と半信半疑で試みたのだが、効果は「絶大」だった。以降、この対策を施した樹木の被害は皆無。その上、冬の寒さから守られる効果があるのか、果樹系については生長が早まったような気がする(後者についてはちょっと怪しい)。
対象樹木は、桜、楓、ナナカマド、カリン、林檎、ヤマボウシに絞り込んでおり、計9本。タンスシートと同じく100均ショップで購入した透明の荷造りテープでグルグル巻くだけなので、コストは1,000円にも満たない(シート2パックで3本の木に使える)。春になったら、樹皮を傷付けないように鋏でジョキジョキ切って、そのまま捨てるだけだ。あまりにも「安価」かつ「効果絶大」だったので、この方法を紹介していた方にお礼のメールを送ろうとした。だが、不思議なことに、そのHPを再び見つけ出す事は出来なかった。地道、健気、誠実をモットーに生きていた私への「神様からのささやかなご褒美」だったのかもしれない。
今日の午前中は、この作業に取り組んだ。と言っても、手慣れたもので、1時間も要さない。敷地内には、お洒落な銀のドレス(スカートかな?)を纏ったお嬢さん達が点在している。
今日を境に、トリグラフ・リサーチは、本格的な冬に突入だ!
トリグラフ・リサーチ 稿房主
『TRI稿房通信』 Vol.47