【縄文土偶探訪記 Revival season Vol.7】梅之木遺跡(山梨県)《おすすめスポット》

探訪博物館: 梅之木遺跡(https://www.city.hokuto.yamanashi.jp/docs/1556.html#13062690444
探訪日: 2019年5月10日
探訪目的: 名も無き土偶さんと美しき山々の光景

今回の投稿は、【縄文土偶探訪記 Revival season】であると同時に、久々の【八ヶ岳縄文道】関連でもある。既に、八ヶ岳界隈で縄文関連の考古博物館(そして土偶さん)と遺跡については、すべて探訪を終えたものと信じ切っていた私が、偶然、新たな、そして本当に素晴らしいロケーションにある縄文遺跡を訪れる事になったのだ。その遺跡の名前は「梅之木遺跡」、所在地は、山梨県北杜市明野である。

梅之木遺跡の存在を初めて知ったのは、5月10日の午前9時前。この日、八ヶ岳オフィスから新百合ヶ丘の自宅に帰る予定であった私は、途中、甲府市内に立ち寄る所用が出来たため、甲府までの帰路は中央道を通らずに、一般道で新緑を楽しもうと考えた。どういうルートをD4でドライブしようかとWeb検索したところ、偶然、「縄文時代中期の集落跡『梅之木遺跡』オープン!」という文字が目に飛び込んできた。

そんな名前の遺跡は、これまで見た事も聞いた事もなかった。すぐに記事をクリックすると、所在地は、北杜市明野町、2018年4月27日オープンとある。公式HPらしき物は見当たらなかったが、周囲の景観は素晴らしく、敷地内のガイダンス館に縄文式土器等、出土物が展示されている等々の情報を記したブログ記事を数本発見。さらにGoogleマップで、梅之木遺跡が、社主さまと訪れた事のある「ハイジの村」に近い事を知った。方向的には甲府に向かう途中にあり、申し分の無い「寄り道」スポットである。

そんなわけで、この日の午前中、急遽、「梅之木遺跡」を探訪する事になった。八ヶ岳オフィスを発ったのは午前9時半。途中コンビニに立ち寄った後、新緑の美しい山道を走行。迷う事無く遺跡に到着したのは10時20分過ぎだった。駐車スペースにD4を置いて周囲を見渡す。南アルプスと八ヶ岳の眺望が兎に角素晴らしい。「神々のおわします地」と言うよりも「神々の愛でる地」といった表現が相応しい場所である。

駐車場から見た遺跡広場と南アルプスの山々。

駐車場内に置かれた案内プレートを読んでいると、縄文人の衣装(らしき物)を身に纏った男性が近付いてきた。第一印象は「ちょっと怪しい」。男性は「よろしければ、梅之木遺跡について解説しましょうか?」と語りかけてきたので、すぐに敷地内にある「ガイダンス館」の職員さんである事に気が付いた。

駐車場に置いてある「梅之木遺跡」の解説プレート。これを読んでいたら、縄文人さんが話しかけてきた。最初は、ちょっと怪しい人かなと思った。

次の甲府での予定もあるため、私が「説明にはどの位、時間はかかりますか?」と尋ねると、この方(以下、縄文人さんと呼ぶ)から「時間は自由にどうとでも調整できます。」との言葉が返ってきた。これは私が講演でよく使うフレーズである。とてもナイスな答えだったので、「それでは10分コースでお願いします。」と伝えた。縄文人さんの話は、駐車場から遺跡広場を見おろしながら、遺跡周辺の環境紹介やこの遺跡の特徴である土で屋根を覆った竪穴住居の解説に及んだ。

梅之木遺跡の復元竪穴住居の特色は住居内部の生活空間を掘り起こした際の土で屋根を覆っている事にある。復元住居の中は予想していたよりもかなり広い。
遺跡広場の中央付近に再現された竪穴住居の内部。天井はオープン(開け閉めできるかは質問し忘れた)になっており自然採光方式となっていた。

その後はガイダンス館に移動して、出土物の解説が続いた。ガイダンス館はこぢんまりとした1室で1つの壁面が出土物の展示スペース。他の壁面には解説パネルが並ぶシンプルな造りである。土偶さんはいらっしゃらないのか?とすぐに展示物をチェックしたら、お顔はないが胴体を発見。他にも2点、土偶さんのパーツらしき物もあった。これで【縄文土偶探訪記】としての要件は成立したのである\(^o^)/

ガイダンス館の外観。その左手には縄文人さんの常駐する「竪穴式住居づくり事務所」なるテントがある。1日のほとんどをこのテントで過ごすそうだ。
ガイダンス館の展示室はこぢんまり&サッパリとした造りであった。博物館と称するためには、ちょっと展示物が少ないのだろう。
土偶さんの展示物はこれだけ。でも、実物との事なので、これで【縄文土偶探訪記】の要件は無事に満たした。
ガイダンス館の展示室には、梅之木遺跡が日本遺産に認定された「星降る中部高地の縄文世界」に含まれる遺跡である事を示す認定証が飾られていた。

その後、この梅之木遺跡の最大の魅力は、周辺の景観の素晴らしさと管理人である「縄文人さん」にある事に気が付いた。景観については、掲載した写真をご覧いただきたい。開放感と周囲の山々の美しさは抜群で、この地に集落を構えた「本物の」縄文人のセンスの良さに感動する。

遺跡広場から眺める八ヶ岳の景色。西岳や権現岳を背にした標高1,300mの地にある我がオフィスはどのあたりだろうか?
遺跡広場中央からガイダンス館方向を見上げた景色。中央に見える山々は曲岳や黒富士だろうか? 山にはまったく詳しくないので間違っていたらゴメンナサイ。

「管理人」の方の縄文人さんの解説の内容は、実験考古学的と言うべきであろう。竪穴住居を実際に作った時の話やランプ型の土器を模して、植物性と動物性の油のどちらを縄文人が使っていたか試してみたという話など、兎に角、面白い。私が大嫌いなデスクワークだけで組み立てた解説とは迫力(リアル感)がまったく違うのだ。

これが縄文人さんがランプ型土器を模したレプリカ。実際に様々な油を注いで実験したそうだ。

あまりにも楽しい時間だったので、結局45分も滞在して「縄文人さん」と、プライベートを含めてあれやこれや話をしてしまった。次のスケジュールの関係で事前に予定していた見学時間は20分だったので、時間に几帳面、かつ、人見知りの私には、異例中の異例とも言える長居である。

見学の最後に、復元竪穴住居の側で私の名字を伝えた後に「縄文人さん」の名前を尋ねた。すると「縄文の名前はアガヤと言います。縄文名なので字はありません。」というこれまたお洒落な言葉が返ってきた。

「竪穴式住居づくり事務所」の脇に立つ縄文人さんの後ろ姿。縄文人ネームは「アガヤ」さんとの事。私に聞き間違いがなければだが…

「アガヤさん、次回は家内を伴って必ず近い内に、また来ますね!」と言って、私は駐車場へと向かった。D4のドアを開けた時に、もう一度、竪穴住居の方を眺めたら、アガヤさんが大きく手を振っていた。私も思わず手を振った。こんな子供のような仕草をしたのは何年ぶりだろうか? こうして、私はとても清々しい気持ちで梅の木遺跡を後にしたのである。

【縄文土偶探訪記】読者の皆さん、梅之木遺跡を是非、訪れてみて下さい!そう、天気の良い日にお弁当でも持って…  遺跡広場の中央で寝転んで、青い空や周辺の山々を眺めたら、きっと大都会の人混みの中であくせく働くのが阿呆らしくなってきますよ!!

おっと、大切な事を書き忘れた。遺跡やガイダンス館の見学、縄文人さんの楽しい解説すべて込みで、入館料・見学料は無料でした!