【八ヶ岳縄文道】② – 山梨県金生遺跡出土の「ちゅうた君」

今日から2月。リニューアルから1ヶ月が経過した「稿房通信」は新コンテンツが、ほとんど出揃った。あとは問題の「継続性」を如何に維持するかである。これはまあ「鋭意努力」するしかない。取り敢えず、昨日に続いて「八ヶ岳縄文道」を配信し、軌道に乗せよう!

【八ヶ岳縄文道】で最初に紹介する土偶さんは、山梨県北杜市金生(きんせい)遺跡出土の「ちゅうた君」としよう。尖石の縄文のヴィーナスさまや仮面の女神さまではなく、夢に現れたラヴィさんでもないところが、ひねくれていて「稿房通信」に相応しいように思う。

所蔵は北杜市考古資料館。弊社オフィスからは車で20分程の場所にある。考古資料館から、車でさらに、ほんの数分の「金生遺跡」は、八ヶ岳南麓のほぼ中央部、標高800m付近の尾根上に位置している。

この遺跡は、中部地方における大規模な「配石遺構」を伴った縄文時代後・晩期の代表的な集落(およそ2haの広さ)として貴重であり、一部が1983年に国指定の史跡に指定された。遺跡公園からは、八ヶ岳や南アルプスの山々が遠望できる。素晴らしいロケーションだ。

ちゅうた君は、国宝土偶「かっくうちゃん」と同じく「中空土偶」とされている。現存部の高さは23cm。北杜市考古資料館の2F展示室では、豪華なガラスケースに単独展示されており、前後左右あらゆる角度から、鑑賞かつ写真撮影可だ。

ちゅうた君のアップ画像。土偶さんはそもそも「異形」であるが、ちゅうた君はその中でも異色の存在である。

「異形」と表現される事が多い縄文土偶さんの中でも、ちゅうた君の造形のユニークさは際立っている。ガッシリとした両足の上に、直接お顔が乗ったように見える。目は穴で表現され、突起状のお口は上を向いており、私は初めて見たときに、まるで「ポット」のようだなと感じた。縄文人が果実酒でも作って、それを楽しむ際の器かな? なんて勝手に想像したのだ。

ちゅうた君の正面からの全身画像。初めてお目にかかった際には、土偶さんではなく、縄文時代のお洒落なポットみたいな物かと思った。

縄文式土器と同じように輪積み方式で作成されており、祭祀で使われた道具(祭祀土偶)であると考えられているようだ。但し、土偶さんの用途については様々な説があり、本当に祭祀土偶であったかどうかは誰にもわからない。そこがまたミステリアスでたまらない。

ちゅうた君の背面画像。お口らしき突起はないが、スッキリとした美しい造形である。

ちなみに「ちゅうた君」というお名前は、山梨県埋蔵文化財センターのホームページで初めて知った。土偶は基本的には「女性」なので、何故、この祭祀土偶さんが、君付けで「男の子」の扱いになっているかは謎である。同埋文センターは「飛び出すちゅうた君カード」なるものを作成しており、この土偶さんが、山梨県の重要な埋蔵文化財のひとつであることを物語っている。

ちゅうた君の側面画像。お口が上向きにかなり突起しているのがわかる。

八ヶ岳の縄文土偶さんを、縄文のヴィーナスさまを頂点とする「吊り目美人系」、仮面の女神さまを領袖とする「仮面の巫女系」等、私は独自の勝手な解釈でいくつかの系統に区分している。だが、ちゅうた君だけは「唯我独尊」。そのユニークさは、彼のお口と同じで「突出」しているのだ!

こちらは超レア写真。特別展の際に、頭頂部を真上から撮影したモノ。ん?? 紐か何かで吊して使っていたのか? ちゅうた君の使途や役割は想像力をかき立てる。そもそも、土偶さんなのに、何故、、男の子(君付け)なのだ???