新たな脅威への『宣戦布告』! 対タケニグサ防衛戦

「好奇心」「探究心」「闘争心」なんて類に衰えを感じるようになったら、人間生きていても全然面白くないだろうなと心底思う。八ヶ岳の豊かな自然環境は刺激に満ちていて、色々な場面で感性を磨く機会を与えてくれる。だから好きだ。

稿房通信で何回か紹介してきた『鹿』との闘い(庭の樹木防衛戦)なども、傍から見ればアホらしく見えるかもしれないが、私は本気で取り組んでいるのだ。「敵(脅威)」の存在は、生物の本能を活性化させる重要な要素だと思う。

最近、八ヶ岳の我が家の敷地周辺に、私の本能がアラートを発する「謎の植物」が大繁茂している。敷地西側に位置する財産区林の大規模間伐が実施されてから3年。針葉樹の多くを伐採し広葉樹を温存する「雑木林化(里山化)」が図られた結果、財産区林の陽当たりは劇的に向上した。そこで一気に勢力を拡大したのが、この謎の植物だった。

3年前に財産区林の大規模な間伐が行われ、林床の陽当たりは驚く程に良くなった。下草はシダ類が中心であったのだが、昨年頃から正体不明の植物が繁茂し、今年の夏には財産区林の涸れ沢は、この「謎の植物」で埋め尽くされた。

昨年までは「何か知らない草(木?)があるなあ~」程度の認識だったのだが、今年の初夏になって、財産区の下草は、ほとんどこいつばかりになってしまった。「異常な繁茂力」だ。植物図鑑やインターネットで検索したのだが、どうしても名前がわからない。そうこうしている内に、我が家の敷地内にも侵入してきた。当然ながら、草刈機による「殲滅戦」で対応した。その結果「茎が空洞」である事はわかったのだが、残念ながら種類の特定には至らなかった。

「謎の植物」の葉と茎。我が家の敷地に侵入したものは草刈機で殲滅。茎は空洞で黄色っぽい樹液が滲み出る(毒性がある事が判明)。葉の形は、どう見ても在来種ではなさそうだ(裏白)。八ヶ岳、外来種、掌状の葉、裏白の葉、茎空洞等々、様々なキ-ワードで検索したが、それらしい物にヒットしなかった。また、誰に聞いても「知ってるけど、何だっけ?」といった反応ばかり…

我が家を所用で訪れる地元の方に片っ端から、この謎の植物の名前を尋ねた。「ええと、なんて言ったかな?確か外来種なんだけど…」とか「最近、財産区でよく見るけど、名前は知らないなぁ。」といった類の情報しか得られなかった。

オフィス・セルフビルドでお世話になった友人Tさんが、8月のお盆の時期に八ヶ岳に滞在した際にも、この植物について質問した。Tさんも異常な繁茂ぶりに驚いたようで、ウッドデッキに置いたロッキングチェアに腰掛けて、スマホで30分程検索していた。色々と候補にあがった植物の写真を見せてくれたのだが、どれも違った。結局、この謎の植物の名前は判明しないまま、9月を迎えた。

先週の八ヶ岳ショートステイの際にもこいつが気になって仕方なかった。一段と勢力を増したような気がしたからだ。「確か川崎自宅に詳しい植物図鑑があったな…。写真だけ撮影して、暇な時にジックリと調べよう!」と決めて、3日(日)の朝、八ヶ岳オフィスを後にした。

昨日は、東京Day。帰りの小田急線の車中で、かつての緑豊かな里山が、無機質なマンション街に変わってしまった様子にいつものように心を痛めた。自然界で共存していた植物や動物からすると人間こそが「異常な繁殖力の外来種」かもしれないな…

ん? そう言えば、森林伐採や開発、山火事や洪水などで裸地となった土地に、真っ先に侵入して繁殖する植物の事を森林インストラクターの試験勉強の時に学んだな? ええっと、何だっけ? そうだパイオニア(先駆)種だ!よく考えたら、八ヶ岳の謎の植物は「パイオニア種の典型」である。

ついでに、高尾山での実地講義(研修)の際に、「樹種判定」の講師の先生が教えてくれた事を思い出した。「樹木名の判定がつかない場合は、調べようとしている樹木に似ている種の名前をメイン・キーワードとして、さらに、その樹木と特徴(葉の形状、幹の色等)を加えて画像検索を掛けると、沢山並んだ写真の中から、かなりの確度でターゲットの樹木を見つけ出す事が出来ますよ。」って、講義していたな…

自宅に帰ってすぐに、森林インストラクター(試験)の知見を頼りに、謎の植物を再リサーチした。まずは試しに「植物 パイオニア種 竹(茎が空洞だから)」と入力して画像検索。と、謎の植物の写真がいきなり数枚現れた。見事な「一発ヒット」である\(^o^)/

謎の植物の名前は「タケニグサ(竹似草・竹煮草)」だった。別名は、チャンパギク。チャンパとは、インドシナ地方(南ベトナム付近)の古い国名であるらしい。欧米では観葉植物として栽培されているとの事。地元の方には「外来種」と聞いていたけれど、実際は「日本原産種」であるらしい。まっ、そんなのどっちでも良いのだが…

「植物 パイオニア種 竹」と入力して画像検索したら、見事に一発でヒットした。謎の植物の名は「タケニグサ」。森林インストラクター試験の知見が役に立ったぞ!欧米では「観葉植物」らしいが、私にはまったく好みではない。我が家の敷地内への侵入は完全阻止するぞ! タケニグサへ「宣戦布告」した。

そしてアルカロイドの一種を含む(茎や葉を折ると黄色い汁が滲み出る)有毒植物である事も判明した。ナルホドね!だから、あの何でも食い尽くす鹿さん達が見向きもしないんだ。外見的に私の好みではないし、有毒植物(皮膚炎やアレルギーを引き起こす)である以上、我が家の敷地への侵入は「絶対阻止」するしかない。

トリグラフ・リサーチは、新たに「タケニグサ」に対して9月4日に宣戦布告。新たな脅威との防衛戦に突入したのである。

あ~あ、でも「謎の植物」が何か判明してスッキリした。大嫌いな混み合った電車の中で、自然破壊に心痛めるのも、まあ悪くはないな…