「謎の49番トンネル」を離れて、前日歩いたコースを忠実に逆に辿って行くと、やがて「不思議なカラス」と出会った森林エリアへと足を踏み入れた。
幸い、カラスが林の方向へ飛び去る直前の写真を目印となる朽ちた切り株と一緒に1枚撮影してあった。
切り株は散歩コースの右脇にあったので、逆順路で歩いた場合、左側を気にすればよい。注意深く様子を見ながら歩いて行くと、進行方向前方の左手に「謎の構造物」を発見した。最初はシルエットの感じで、ポストかなと思ったのだが、こんな山中にそんなモノ有るわけないし、色も赤くはない。
散歩コースからかなり外れる事になるが、どうしても気になるので、林の中の道なき道を歩いて正体を確認に向かった。2分も要せずに到着。正面に回って見ると、ただの「元電話ボックス(残骸)」だった。ん?何でこんな場所に電話ボックスがあるんだ。まっ、イイか。
散歩道に戻ろうと、ショートカットコースを歩く。漸く見慣れた道に戻ったら、今度は林の中に「道標」らしき物を発見。何かと近付いてみると、枕木を鉛筆のように削って埋めてある。どうも不思議な空間である。
この枕木の加工物の右手は急な下りの傾斜となっていた。昨日歩いた順路であれば左手側に相当し、あのカラスが飛び去ったのと同じ方向である。
耳を澄ますと遙か下の方から川が流れるような音がする。樹間を下の方に覗くと、コンクリートの柱と道らしき物が垣間見えた。あれっ?こっちにも散歩コースがあるのかな??
確かに傾斜は急だが、まったくの未整備という感じではない。むしろ、人が繰り返し通ったような気配がある。それを頼りに急傾斜を慎重に下りていくと、右手に電信柱のような物が見えてきた。さらに近付くと鉄道の「架線柱」だった。この時点で、道のように見えたのは「旧中央本線」の線路跡である事に気が付いた。
架線柱を通り過ぎてから、自分が歩いてきた道を振り返った。思ったよりも急斜面を下りてきた事にちょっと驚く。
さらに傾斜を下りていくと、やっと散歩道よりもはるかに幅のある平らな道に出た。傾斜地の反対(進行)方向には架線柱が何本か並んでおり、明らかに線路跡である。
「予期せぬ場所に来ちゃったなあ…」なんて呟きながら後を振り返った。『絶句』というのは、こんな時に使う言葉かもしれない。そこにはまた「トンネル」があったのだ…
トンネルの開口部は、コンクリートで埋められてはおらず、金属製のパイプのような物で格子状に塞がれている。「邪悪な生物を閉じ込める檻」のようで無気味である。
近付くのをやめようと思ったが、位置的に、2つめに見つけた(第2の)トンネルの出口である事は間違いなさそうだ。この格子であれば、反対側の開口部の通風孔から光が射している写真が撮影できたのも辻褄が合う。
恐る恐る金属製の格子まで歩いて行って、隙間から中を覗いた。真っ暗ではないが、薄暗くて中の様子はよくわからない。仕方ない。またHX90Vで強制フラッシュ発光撮影だな…
1枚目を撮影して、すぐに再生。おや?トンネルの途中が崩落して塞がっているじゃないか。だとしたら、第2のトンネルの通風孔から撮影した写真の「光」は何だったんだ。別のトンネルか??
写真の右上の方で壁が崩落している、妙に赤っぽい色で気味が悪い。ややズームアップして、その方向を撮影。確認したら、煉瓦の色だった。
もう一度目を凝らしてトンネル内を眺めたが、やはり光が射すような隙間はまったくない。気味が悪くなってきたので早々にトンネルを離れ、反対方向に歩いて行った。
距離にして50~60m程歩くと(あくまでも大雑把なイメージ)、前方に今度は金属製の「立ち入り禁止フェンス」のような物が見えてきた。そして、その先には「赤錆びた鉄橋らしき物」が先へと伸びていた。
えっ。これが「旧立場川橋梁(たつばがわきょうりょう)か?こんなすぐ近くにあるのか?」絶句の次は『驚愕』だった。
極度の高所恐怖症である私は、近寄りたくもない構造物であるが、折角ここまで来たので、フェンス手前50cm程まで近寄って写真撮影。「もうボロボロじゃないか…これ崩れないのか?」
さらに勇気を振り絞って、フェンスの左手下方からズームアップして橋梁部分を写真撮影。赤錆の浮いた構造物特有の「朽ちたもの悲しさ」が伝わってきた。
さらに急斜面を下って、橋梁部全体を撮影しようと試みたが、鉄橋は私が予想していたよりも長い。そして恐ろしい程の高さがある。
ふと、斜面から鉄橋の対面側を眺めると自動車が走っているのが見えた。「な~んだ反対側は車で近付いて見えるのか…」と思ったら、これ以上無理をして写真撮影するのが急にアホらしくなってきた。
この「合理的な諦めのよさ(=根性無し)」で、私はこれまでの人生を要領よく生き延びてきたのだ。躊躇なく「撤収」を決め、下ってきた急斜面を今度は四苦八苦しながら上ったのである。
斜面を3分の2程登ったところで、さすがに息が切れてきた。すると下りの際には気が付かなかったが、右手の方にもう少し緩やかな「迂回路」のようなものを見つけた。その道を3-4分歩くと、急に目の前が開けて散歩道に出た。
目の前には「朽ちた切り株」のようなものがある。「これ見覚えがあるぞ」と瞬間閃いて写真撮影。iPhone Xを取り出して照合すると、「カラスが林に向かって飛び立った切り株」に間違いなさそうだ。
「な~んだ、あのカラスは、旧立場川橋梁を案内したかったのか」と妙に納得。正直、拍子抜けしてしまった。要は、旧立場川橋梁の案内人(鳥)ね!
その後は、散歩コースから外れる事なくD4が待つ駐車場に直行。エンジンボタンを押して、時計を見たらちょうど10時。長く感じたが、所詮はたった1時間の「小探検」であった。
さあ、続いてD4で、旧立場川橋梁の全景を眺めに行こう!