本来ならば8月なんてのはずっと八ヶ岳でお仕事するために、わざわざログキットをフィンランドから取り寄せてオフィスをセルフビルドしたのだ。だが、世の中は思い通りにはならない。来週も東京で仕事が入っている。はぁ~
まあでも、川崎自宅から八ヶ岳オフィスまでは車で2時間弱なので週末のみのショート・ステイも全然苦にはならない。今日は、朝8時から予約を入れ、2013年からの恒例となっている「ブルーベリー摘み」に家内と出かけた。
何故、2013年からかというと、オフィス・セルフビルドの際に水道工事でお世話になったUさんから最高のブルーベリー農園を紹介いただいたからだ。オーナーはUさんの義理のお母様。ご自宅の周辺に広がる農園は、現在は観光客等には開放しておらず、顧客層は主に知人やその紹介客であるとの事。
2013年に初めて訪れた際には、ブルーベリーの美味しさと安さに感動。すぐにTさん家族と再訪したのだが、ご家族一同大喜び。翌年、家内が八ヶ岳本宅でテニス合宿した際に、テニスのお仲間を連れて行ったら、これも大好評。今や、我が家における「夏の外せない行事」となっているのだ。
Uさんからは、7月初旬に今年も開園とのご連絡をいただいたのだが、バリ島トリップや全国講演が続き、ブルーベリー摘みに行く事が出来なかった。と気が付けばもう8月、慌てて先週半ばにUさんにご連絡すると、もう実りのピークは過ぎており、辛うじて収穫可能な状態との事。
そう、今回の八ヶ岳ショートステイは、ブルーベリー摘みがメインの目的なのだ。
8時ちょうどに農園の駐車場に到着。Uさんのお母様から摘み取り用のカゴ2つを受け取る。
これまではご自宅前の農園で摘んできたのだが、今年はほとんど収穫済みとの事で、ご自宅裏手のやや小高い敷地にある農園を案内された。
8時10分から摘み取り開始。1人1kg以上摘み取れば入園料は無料。1kgの価格は、1,100円(信じられない安さ)で代金は100g単位で計算してくれる。そして、時間制限はなく、摘み取り中は「食べ放題」なのだ。さらに、農園は美しく整備され、摘みたてのブルーベリーは素晴らしく美味だ。
ブルーベリー摘みは「単調な作業」である。ブルーベリーの樹の側に立ち、濃い紫に熟した実のみをカゴに放り込む。その繰り返しである。どのような頻度で口に放り込むかは個々人の好みである。
私は「小鉢男」なので、緻密でセコい作業をやらせたら、マイスター級である。では「単純作業」はどうかというと、作業そのものは要領がイイのでスピードは早い。だが、持久力や忍耐力が欠落しているので、それが持続できない。
ゆえに、これまでブルーベリー摘み競争(私が勝手に思い込んでいるだけ)では、家内に惨敗してきたのだ。代金を支払う際に、個々人のカゴを秤の上に置いて重さを量るのだが、大差で私が負けた事が判明した際の家内の蔑むような目…私は、これまでそれにじっと耐えてきた。
実は、今日は心に期すものがあった。家内は昨日から夏風邪気味で体調を崩しており、どうもいつもの俊敏さが感じられない。それに家内は、好みの味の樹を絞り込んで、その樹から集中的に実を摘む傾向がある。今日はピークを過ぎた時期での摘み取りなので、収穫の対象となる樹の本数が例年より少ない。きっと絞り込み作業に時間を要するだろう。
口に放り込む頻度を最低限にまで落とし、味など考えずに目の前にある実をひたすら積み続ければ私にも勝機があるかもしれない。いつもは30分程で枯渇する持久力を今日は気力で60分まで維持させよう。こんな事を考えながら、ひらすら摘み取りを続けた。
30分程経過。意図を悟られないようにしながら家内のカゴの中を敵情視察。「あれっ、ほとんど同じような量だ。もっとピッチを上げなくちゃ駄目だ。」摘み取りのピッチを2割程アップした。
45分経過。再び敵情視察。「おっ、少しはこちらの方が多いかな。いや、カゴの形がちょっと違うから油断は禁物だ。ヤバい。もう飽きた。単調な摘み取り作業に身体が拒絶反応を示している。」
と、ここで家内が「あと何分位摘むの?」と尋ねてきた。ここで終わりにしたのでは、私が勝てたか微妙である。そこですかさず「今日は、とりあえずは1時間は摘もうよ。」と答えた。家内の顔には「この気の短い男がどうしたの?」とでも言いたげな表情が浮かんだ。
9時10分。摘み取り開始から1時間が経過。45分過ぎから、私は摘み取りペースをさらにアップ。家内は、好みの味の樹を探すのにあちこち移動していたので、おそらく私の勝利は間違いないだろう。だが、勝利をより確実にするため、私はもう5分、最後の気力を振り絞って摘み取りを続けた。
9時15分。もう忍耐の限界だ。カラータイマーが点滅を始めた。思わず家内に声を掛けた。「今日は終わりにしようか。」受付兼計測所に向かう途中、家内のカゴをチラ見。「大丈夫。今日は勝っているぞ!」。
場面は変わって重量計測用の秤の前。まずは家内のカゴを秤のプレートに置いた。大きく揺れた針が止まった。「1.2kgだね。」とUさんのお母様の声が響いた。「えっ、1kgを軽く超えてるのか?家内は今日はあんなにノンビリと摘んでたのに…」
そして、私のカゴが秤の上に置かれた。読者の皆さんは、私の連敗を予想(期待)している事だろう。結果は「こっちは1.5kgだね。」遂に家内に勝った!思わず「ヨッシャ!」と小さく叫んでしまった。こんな楽しいブルーベリー摘みは初めてだ!
2人で計2.7kg、2,970円の代金を家内が支払った。初の勝利に気を良くした私は、家内に「今日は300gも僕の方が多く摘んだね。」と自慢げに語りかけた。
その瞬間「はあ~、そんな事気にして摘んでたの?」と明らかに呆れた感じの言葉が返ってきた。その顔には「まったく、この器の小さい男は勝手にひとりで何をムキになっているだろう?」とこれまで以上に蔑んだ視線が…
なんか、ちょっと悲しい…