6月1日に「トリグラフ八ヶ岳西麓気象観測所」の完全稼働を宣言してから、随分と長い休稿期間に入った。「目指すべきは強か(したたか)な銀行」という新たな講演テーマで、6月中旬から絶え間なく講演・プレゼンが続いたのも一因であるが、珍しく「仕事」の事ばかりを考えていたため、稿房通信にまで手が回らなかった。
今年で銀行アナリスト稼業は28年目に突入したが、流石に「実績PBR 0.2~0.3倍台の上場地域銀行がごろごろある」という状況には心を痛めている。講演先で「海外の機関投資家から、いますぐ銀行を清算するのが株主のためだ!」といった類の厳しい意見が寄せられたという話しを何回か耳にした。足元、バランスシートの健全性(=BPS)には何の曇りもないのだから、海外機関投資家の意見は、暴論ではなく「正論」である。
我が国地域金融システムの在り方は、どこでどう間違ってしまったのだろうか? ここまで市場評価が悪化した切っ掛けは、日銀によるマイナス金利政策への移行であるのは間違いないのだが、要は、それ以前から蓄積してきた「制度疲労」のようなものが、マイナス金利政策によって「破断界」を超えてしまったのであろう。
「継続企業(going concern)」である事を否定されたとも言い得るような株価を反転・上昇させるためには、相応の「catalyst」が必要不可欠となる。「果たして、どんな絵図面を描いたら良いのだろうか…」なんて事ばかり考えながら、全国を巡業してきた。
8月の後半からは、2ヵ月強の思案の末に出来上がった提案書と共に、再び、全国の地域銀行を行脚する事になる。そのため、今週と来週は主に八ヶ岳オフィスに滞在し、しっかりと夏休みを取る事にした。実のところは、9日と10日も仕事が埋まっていたのだが、先週後半に、急遽予定が変更になったのだ。ラッキー!
「今年はこれまで真面目に仕事をし過ぎた。ちょっと早めに9日から八ヶ岳に行こう。」なんて喜んでいたら、八ヶ岳オフィスのウッドデッキ増設の基礎工事を依頼していた建設会社から、電話が入った。お盆明けに予定していた工事が、こちらも急遽、9日~11日で対応可能になったとの事。「なんて間が良いんだ。やはり日頃の行いの賜だな…」と、思わず呟いてしまった。
そんなわけで、昨日(8日)の午後5時過ぎに、八ヶ岳オフィスに戻ってきた(出社した)。オフィスの基礎工事をお願いした業者さんなので、段取りは阿吽の呼吸である。明日の朝から作業に着手できるように、既に、枕木アプローチにはユンボが搬入されていた。「さあ、久々の土木工事だ。楽しみだなぁ~」なんて浮かれていたら、急に心配事を思い出した。そうだ。スズメバチの巣は、大丈夫かな…
講演の合間を利用して、8月1日と2日に八ヶ岳オフィスに滞在した。ウッドデッキの部材を注文するための細かい採寸作業等がメインの滞在目的であったのだが、作業中にオフィスの壁に敷設したBSアンテナの裏に、スズメバチが大きな巣を作っているのを発見したのだ。
アンテナの支柱を核にした構造で、大きさは目測で直径30cm強と言ったところだろうか。蜂が巣穴から頻繁に出入りしているのが確認できた。外見や攻撃性から、獰猛危険な「オオスズメバチ」や「キイロスズメバチ」ではなく、「コガタスズメバチ」であろうと勝手に判断した。
こいつなら、何とか自分で退治できるだろうと、根拠のない楽観論を抱き、富士見のJマートで、スズメバチ退治用の殺虫スプレーを2缶購入。翌2日のお昼前に、オフィスの窓から身を乗り出して、2m強離れた巣に向けて、スプレーを丸々1缶噴霧した。スズメバチが攻撃したきたら、すぐに逃げて、オフィスの窓を閉める態勢を整えていたのだが、奇襲攻撃が奏功したのか、ハチは襲ってこなかった。巣は全体が噴霧した薬剤で濃灰色に変色し、ポタポタと液垂れしていた。巣穴からは、苦しそうにスズメバチが這い出してきて、2~3匹が下に落ちていった。私がこの時、「完全勝利」を確信したのは言うまでもない。
スズメバチの巣の事を思い出したのは、昨日の午後6時過ぎである。庭からBSアンテナを見上げて息を呑んだ。巣が明らかに1回り大きくなっていたのだ。さらに巣穴から出入りしているハチも… やはり、殺虫剤1缶漬け程度では、スズメバチは退治できないのである。すぐにネットで確認すると、巣の外殻(シェル)を壊さない限り、殺虫剤の効果は限定的である事が判明(>_<)
この時間では、頼りになる「富士見高原別荘管理組合」に依頼しても、対応は翌日以降になるだろう。明日は、業者さんは午前9時頃にはやって来るはずだ。工事を遅延なく進めるためには、自分で解決するしかない。即座に判断した私は、樹木用の2m支柱2本を銀テープでしっかりと接合・固定して、その先には、小型のノコギリを巻き付けた。そう、蜂の巣を破壊するための「突撃棒」である。スズメバチは、髪の毛の黒い部分を目印に攻撃してくるそうなので、頭には、草刈りの際に被るハスクバーナのヘルメットを纏った。
意を決して、第1次突撃を敢行したのは、午後6時半過ぎだった。巣の向かって右側から突撃棒を突き立てる。装着したノコギリの威力は抜群で、巣の上部が大きく壊れた。事前に定めた「突くのは2回、その後速やかに撤退」というルールを厳守し、5m程離れた枕木テラスから、巣の様子を窺う。巣が大きく壊れたためハチは大混乱し、周辺を飛び回っているが、幸い、私に向かってくるハチは皆無だった。
第2次突撃は、その15分後。今度は、向かって左側から無傷の下部を狙った。二突き目の時にノコギリの刃が、巣の下部を大きく切断したような感じになり、巣の残骸(塊)が2~3個落下した。やったぞ!第2次突撃の効果は甚大だと喜んだのは束の間、2匹のハチが私を目指して飛んでくるのが見えた。ヒエ~(と叫び声を発したように思う)と慌てて、突撃棒を放り出し、オフィスの中に逃げ込んだ。
第3次(最終)突撃は、約20分後。時刻は午後7時10分をちょっと過ぎていた。再び向かって右側から巣の残骸を二突きしたのだが、スカスカっとした感じであまり手応えはなかった。スズメバチの反撃もない。オフィスに戻って、窓から残った1缶の殺虫剤を念のため半分程噴霧して、この日のスズメバチとの闘いを終えた。
今朝は、7時過ぎに戦果確認を実施。下から見上げると、巣は外殻を一部残すのみで、中身はほとんど無い。昨日の落下物で、有名な「ハニカム構造」や「蜂の子」を確認できた。まだ数匹の蜂が巣の周辺を飛び回っていたので、落下物をそのまま放置して、オフィスの窓から再度、殺虫剤を噴霧。今度こそ、完全勝利だ!
建設業者さん3名が2台のトラックでオフィスにやって来たのは9時半過ぎだった。現場監督は前回の基礎工事と同じYさんだった。事前の下見で、BSアンテナの裏にスズメバチの巣がある事を認識していたようで、場合によっては駆除するつもりであった事を知る。私が、自分で処理した旨を伝えると、スズメバチは危険だから、あんまり無理しないようにと諭された。今回、素人駆除で刺されずに済んだのは、ただの幸運だったのである。
その後、工事作業の下準備中に、Yさんが、巣の落下物を拾ってきた。大切そうに持っているので聞いてみると「最高の釣り餌」になるとの事。私は、釣りにはまったく興味がないので、良い勉強になった。
こうして、私の「コガタスズメバチ」との激闘(かなり大袈裟)は幕を閉じた。なお、今後のトリグラフ・リサーチ稿房は、オフィスのウッドデッキ増設工事の様子をお伝えする予定である。
トリグラフ・リサーチ 稿房主
【八ヶ岳ライフ】