【縄文土偶探訪記 Final season Vol.4】 北海道博物館(北海道)

探訪博物館: 北海道 北海道博物館
http://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/
探訪日: 2017年9月6日
探訪目的: 北海道の土偶レプリカさん大集合

リフレッシュ目的の「役員慰安旅行」であっても、縄文土偶さんの探訪をしっかりと予定に組み込むのが『伊達と酔狂』を社是とするトリグラフ・リサーチ(と言うか私)の嗜みである。今回は控えめに2つの博物館の探訪プランを立てた。

旅行初日の最初の訪問先としたのが「札幌市埋蔵文化財センター」であった。ここには、吊り目でキリッとしたお顔立ちの「板状土偶」さんが展示されている事を事前にリサーチ。

新千歳空港からレンタカーで直行したのだが、現地に到着して唖然とした。今年の8月7日から来年3月末まで、改修工事に伴い埋蔵文化財展示室は「閉館中」との事なのだ。確かに8月25日付で、Web上にその旨が情報開示されている。

7月中旬に今回の慰安旅行計画を組んだ私は、この情報を知らないままに無駄足を踏んだのである。かつての私なら、逆上して建物の爆破テロ位の事を考えるシチュエーションなのだが、不思議と「それじゃあ仕方ないな…」程度の感情しか湧き上がってこない。

同行した社主さまも「土偶の見学なんて、こんな事ばっかりじゃない。」と宣う。これまで、各地の埋蔵文化財センターの探訪は「見学者は私1人の貸し切り状態」がほとんどで、正直「実際に行ってみなければ何が何だかわからない」先が多かった。そう、今回もただ単に「運が悪かった(縁が無かった)」だけなのである。

こんな具合に、縄文土偶探訪の旅は、私の性格を、かなり(歪んだ形ではあるが)穏やかに変えてくれたように思う。

札幌市埋文の探訪が不発となったので、そのまま札幌市中心部に移動して、お目当てのスープカレーのランチを堪能。この頃には、もうお目に掛かる予定だった板状土偶さんの事は完全に忘れてしまった(所詮、そんなものだ)。

食後は札幌市内を散策。夕方に予定してしている「温泉巡り」までに時間が余ったので、急遽、当初の予定には無かった『北海道博物館』を訪れる事とした。北海道開拓記念館(1971年開館)と道立アイヌ民族文化研究センター(1994年開所)という2つの道立施設を統合して、2015年4月に開館した博物館である。

実は、今回の役員慰安旅行の主目的のひとつは「アイヌ文化について学ぶ」事にあった。これは、7月のバリ島トリップの機内で読んだ「アイヌと縄文: もうひとつの日本の歴史(瀬川拓郎氏著)」(https://triglav-research.com/?page_id=18989)の影響を受けたからに他ならない。

土偶さんについては「もしかすると数体は展示があるかもしれないな…」程度の淡い期待を抱いたに過ぎなかった。北海道博物館着は午後2時半ちょっと前。ここも立派な建物である。やはり、都道府県立の博物館は、市町村立とはお金のかけ方が違うなと実感した。

北海道博物館の堂々たる外観。平日、水曜日の午後の探訪となったが、見学者数が多いのにちょっと驚いた。さすがは「道立博物館」である。

入館料1名600円を支払って、総合展示室(1Fと2F合わせて3,000㎡の広さ)の見学を開始した。1F第1テーマ「北海道120万年物物語」の展示スペースを進んで行くと、すぐに見慣れた土偶さん達のお姿が視野に入ってきた。「おお~、かっくうちゃん以下、土偶さんが勢揃いだぁ~」と思わず叫んでしまった。

1Fの総合展示室を進むと、すぐに縄文土偶さん達のお姿が視野に入ってきた。中央の「かっくうちゃん」はレプリカである事は明らかだったが、それでも突出した存在感を誇示していた。

国宝土偶「かっくうちゃん」のお住まいは「函館市縄文文化交流センター」なので、すぐにレプリカである事はわかったのだが、他の土偶さんは実物があるに違いない。そう期待して「縄文文化~人びとの祈り~」と題した展示スペースをワクワクしながら覗き込んだ。

だが、展示された8体の土偶さん達は、残念ながら「すべてがレプリカ(Replica eight sisters と勝手に名付けた)」であったのだ。【縄文土偶探訪記】でレプリカを扱った(紹介した)のは、過去、「山梨県立考古博物館https://triglav-research.com/?page_id=12588)」と「富山県 砺波市埋蔵文化財センターhttps://triglav-research.com/?page_id=17310)」の2館のみである。

前者はちゃんと実物の展示もあったし、そこで出会ったレプリカさん達は、その後の実物土偶さん訪問の切っ掛けになった。後者については、唯一展示されていた土偶さんがレプリカだったので、紹介せざるを得なかったというのが実情だ。

江別市大麻3遺跡から出土した2体の土偶の「レプリカ」。縄文晩期の墓から2体重なった状態で出土。珍しい「男女の土偶」という見方がある。一方で、顔や体の形がクマに似ている事から「動物の精霊」という説も存在するとの事。後者の説が正しければ、土偶さんとは別物となる。

「さすがに8体すべてレプリカってのは、縄文土偶探訪記には加えちゃ駄目だな..」と、一旦は「お蔵入り」を決定した。だが、8体の内、「かっくうちゃん」と東京国立博物館に展示されている「遮光器土偶模倣土偶さん」以外の6体については、これまでお目に掛かった事は無い。

根室市初田牛20遺跡出土土偶さんの「レプリカ」。解説パネルには「一番東で見つかった土偶」と記されていた。縄文後期(4,000~3,000年前)のものであり、初めて見る土偶さんだった。

探訪予定リストにも入っていない土偶さんばかりなので、私からすると「レア物」である。「まっ、イイか。将来の探訪候補という意味で、Season5のVol.4決定!」と即座に掌を返した。最近、ツリーハウスの方に興味がシフトし、縄文土偶に対するこだわりが薄れてきている事も、当然ながら影響を及ぼしている。

新ひだか町静内御殿山墳墓群出土土偶さんの「レプリカ」。こちらは「首飾りや仮面などをつけた土偶」と解説パネルに記されていた。縄文後期(4,000~3,000年前)のものであり、このお洒落な土偶さんも初めて見るものだった。

それに、展示スペースの脇に置かれた「大型パネル」がとても興味深い。北海道・東北から長野にかけての土偶が出土した主要な遺跡の所在地と代表的な土偶53体を紹介した「超大作パネル」である。

レプリカ土偶さんの展示スペースの隣には、土偶さん出土遺跡の所在地と53体の代表的土偶さんが並んだ大型パネルが置かれていた。実物にご対面した土偶さんを数えたら「まだ6割程度」に過ぎなかった。「縄文土偶の世界の奥の深さ」を再認識した。縄文土偶探訪の旅は道半ばなのである。

その場に立って、果たしてこれまでに53体の内、何体の実物と対面したかを数えてみた。「あれ? このパネルだと、まだ6割位(32体)しか対面していないぞ…」と、予想外に低い結果に呆然。そう、「縄文土偶の世界は、まだまだ奥が深い」のである。

その後、探訪の主目的であった「アイヌ文化の世界」を中心にジックリと見学。滞在時間1時間弱で北海道博物館を後にした。

土偶さん達とはレプリカ・オンリーの対面であったが、「縄文土偶のディープな世界」を改めて垣間見る事が出来て、とても有意義だった。