【縄文土偶探訪記 Season 2 Vol.6】 辰野美術館(長野県)

探訪博物館: 長野県 辰野美術館
http://artm.town.tatsuno.nagano.jp/
探訪日: 2015年4月18日
探訪目的: 仮面土偶 他

長野県下「縄文土偶さん探訪弾丸ツアー」最後の目的地は「辰野美術館」である。所在地は、長野県上伊那郡辰野町。松本や岡谷は何度も訪れた事があるが、辰野町へのトリップは今回が初だ。名前が示すとおり辰野町が運営する美術館であり、私の不勉強であったが、美術館としては、かなり有名であるらしい。ここには、結構メジャーな「仮面土偶」さんが収蔵されており、彼女との対面が今回の探訪の主目的だった。

市立 岡谷美術考古館を発ったのは午後3時5分、岡谷ICから高速道に乗ろうかとちょっと迷ったが、急ぐ旅ではないので、結局、一般道を使った。辰野美術館は、山の頂上付近にある(山の名前は不明)。山全体に、各種のスポーツ施設、宿泊施設などが点在しており、「たつの海」という名の溜池(?)の周辺は、ちょうど桜が満開だった。

辰野美術館の駐車場に着いたのは、3時35分。ちょうど30分の旅である。駐車場から美術館へと向かう上りのスロープを歩くと、すぐに美術館の建物が見えてきた。すっ、凄い…  寺院風の堂々たる建物で、その威容は「県立博物館」のレベルである。「辰野町って、もしかして、超お金持ち?」— 思わずそんな事を考えてしまった。

辰野美術館の外観。兎に角、大きくて立派な造りだ。山の麓から建物を見た際には、宗教法人の本部かなと思った程だ。
辰野美術館の外観。兎に角、大きくて立派な造りだ。山の麓から建物を見た際には、宗教法人の本部かなと思った程だ。

これまた堂々たるエントランスを入ると、左手に受付があった。1人300円の入館料を支払い、清楚で知的な感じの女性職員さん(学芸員さんだろう)から、館内について簡単に説明を受ける。ちなみに、予定外の満開の桜にすっかり上機嫌となった家内は、今度は同行。1F展示室では「桜をめぐる旅-大森英明写真展-」が特別開催中だった。土偶さんとの対面前に、ちょこっとだけ鑑賞しようと展示室に入る。幻想的な桜の写真が美しく並んでいた。ここは最後にじっくり見ようと、即座に決めた。

さあ、仮面土偶さんにご挨拶に行こう!受付で、土偶さんは最上階(3階)に展示されている事を確認済である。家内は、1階から見学順路に沿って美術品を見て回るとの事なので、私単独で階段を使って3階に向かう事にした。

1階展示室を出て階段に向かう際に不吉な表示板がある事に気が付いた。「館内はすべて写真撮影禁止」である旨が書かれている。 しまった、写真撮影がOKなのか確認しなかった… ふと思った。絵画が沢山展示されているのだから当たり前か。きっと土偶さんの展示コーナーは大丈夫だろう。やはり、気になったので、2階の展示室も足早に見て回った。写真撮影禁止のプレートは至る所にある。不安感がさらに高まる中、3階へ。仮面土偶さんの単独展示スペースが、すぐに目に飛び込んで来た。だが、このフロアでも非情な「あのプレート」が存在感を誇示していた。

あ~あ、やっちまったよ。ご対面だけで、記念撮影は諦めるしかないのか…  国宝土偶さんでも、全部、写真はOKなのに、それはないよなぁ~ 「縄文土偶探訪記」初の土偶さんの記念写真無しか。でも規則だから仕方ない。ぶつぶつぶつ… まあそんな次第で、今回は、ミュージアムショップで購入した「仮面土偶さんの絵葉書」画像とインターネットで探し出した使用自由な画像を以下に掲載する事にしよう。

ミュージアムショップで購入した絵はがきをスキャンして掲載。写真では見えないが、左腕は欠落している。
ミュージアムショップで購入した絵葉書をスキャンして掲載。この画像では見えないが、左腕は欠落している。

自分で撮影した写真がないので、どうも文章を書く際に、土偶さんのイメージが頭に鮮明に浮かび上がってこない。解説については美術館Web掲載のものをそのまま抜粋しよう。仮面土偶(縄文時代後期)】昭和初期、辰野町新町泉水地籍で行われた開田工事の際に発見された。高さ20cmで、両腕を左右に広げ、力 強く足をふんばり、当時の出産の姿勢を示すと言われている。顔面にはこの土偶の名のとおり、逆三角形の仮面を付けた表現がある。昭和54年、長野県宝の指 定を受けた。 → との事である。

Webで見つけた画像。セピア色で良い雰囲気なので、掲載させてもらった。上の写真ではわからない左腕の欠落が確認できる。
Webで見つけた画像。セピア色で良い雰囲気なので、掲載させてもらった。上の写真ではわからない左腕の欠落が確認できる。

仮面土偶さんの単独展示スペースの右側には、横長の展示ケースがあり、その一角には土偶さんのパーツが10数点展示されていた。写真が撮れない分、随分と丁寧に仮面土偶さんを見学したように思う。ふと気が付くと、既に、入館後20分以上が経過していた。

受付で、最上階(3階)には周回可能な展望スペースがあり、桜が美しいと聞いていたので、再びお花見モードに切り替える。ちなみに、展望スペースは写真撮影可。5分程掛けて展望スペースを1周、美術館周辺の美しい桜を満喫した。

最上階の展望スペースから撮影した桜の写真。ちょうど「満開」の時期だった。
最上階の展望スペースから撮影した桜の写真。ちょうど「満開」の時期だった。

展望スペースから3階展示室に戻ると、ちょうど家内が3階に上がってきたところだった。展望スペースからの眺望が素晴らしい事と、私はこれから順路を逆行して美術品を見学する旨を伝え、待ち合わせ場所は、1Fの「桜をめぐる旅」コーナーに決めた。

私の場合、残念ながら、土偶さん以外への興味は一気に薄れてしまう。2階と1階の展示室は10分程でサラッと見学を済ませて、再び1階の特別展示室へ。改めてジックリと鑑賞すると、素晴らしい桜の写真が沢山ある。個人的には、桜の花の「儚(はかな)くて妖艶」なところが好きだ。ゾクッとする程の「妖艶さ」を漂わせた写真が数枚有り、思わず見入ってしまった。

5分程すると家内が1階展示室に入ってきた。既に、入館から40分程経過したので、最後の儀式「ミュージアムショップ」でのお買い物モードへ移行した。土偶さんグッズは数点有り、仮面土偶さんのシールと絵葉書(2枚目写真のベース画像)、それと「縄文の森 岡本太郎と歩く」という冊子を購入。

実は、購入を迷ったグッズがひとつあった。仮面土偶さんの実物大レプリカ【制作:野沢尚志さん(画家・縄文土器造形家) 高さ約20cm、重さ約1.1kg】も売っていたのだ。お値段はウン万円。もし写真撮影可だったら、購入していたかもしれない。が、家内が脇にいる状況ではちょっと手を出しづらい値段だった。また、オフィスの土偶さんレプリカ展示スペースは、高さ18cmまでの物が飾れるように作ってある。20cmでは、仲間外れになってしまい可哀想である。

さあ、これにて、縄文土偶探訪記【辰野美術館】編完了宣言をと思った矢先、女性学芸員さんから素晴らしい情報が寄せられた。どうやら、私の「縄文土偶好き」が伝わったらしく、4月29日の午前10時50分頃から SBC信越放送で「今甦る縄文の使者達(仮)(注)」という番組が放映予定であるという事を教えてくれたのだ。

私が、その番組に(異様な)興味を示すと、すぐにA4 1枚の資料をコピーして渡してくれた。なんて優しい人なんだ… この方に限らず、これまで訪問してきた考古博物館の女性職員(学芸員)さん達は、本当に感じの良い人が多い。きっと、知的で穏やかな生活を重ねていると、人間はこのような雰囲気となるのだろう。

結局、辰野町美術館の滞在時間は約45分。仮面土偶さんの写真を撮影できなかったのは残念だが、予定になかった桜のお花見が出来た上に、土偶さん関連のTV番組の情報もゲット出来たのだ。結果は、今回も「大満足」である! エーイ、おまけだ。有名仮面土偶さん2体の写真もおまけで掲載してしまおう。

これは解説不要だろう。縄文土偶サンの中でも、私が1番大好きな「仮面の女神@尖石縄文考古館」である。この写真は、国宝認定後、尖石に凱旋した後に撮影したものだ!
これは解説不要だろう。縄文土偶サンの中でも、私が1番大好きな「仮面の女神@尖石縄文考古館」である。この写真は、国宝認定後、尖石に凱旋した後に撮影したものだ!
「縄文の仮面小町 ウーラちゃん」@韮崎市民俗資料館である。ウーラちゃんと辰野の仮面土偶さんは「ニッコリ顔系」が共通している。
「縄文の仮面小町 ウーラちゃん」@韮崎市民俗資料館である。ウーラちゃんと辰野の仮面土偶さんは「ニッコリ顔系」が共通している。

正に「有名仮面土偶トリオ」である。中央に「仮面の女神」、向かって右に「ウーラちゃん」、左に「辰野の仮面土偶さん」を並べたら、最高だと思う。

(注)結局「よみがえる縄文の女神たち」というタイトルで、4月29日の午前10時50分から11時20分まで放映された。素晴らしい番組だった! 縄文土偶系のテレビ番組については、別途、「縄文土偶探訪記(番外編)」で紹介しようと思う。

トリグラフ・リサーチ 稿房主