【縄文土偶探訪記 Season 2 Vol.1】北区飛鳥山博物館(東京都)

探訪博物館: 東京都 北区飛鳥山博物館
https://www.city.kita.tokyo.jp/hakubutsukan/
探訪日: 2015年4月1日
探訪目的: 東谷戸遺跡出土土偶

4月1日からスタートした2015年第2期の全国講演は、最終日、東京(六本木ヒルズ)でのセミナーまでかなりのハードスケジュールが組まれている。そんな講演の隙間時間を有効活用し、会食や面談で積極的に情報収集、さらに残った時間で、全国各地の「土偶さん」を探訪する事を目標とした。移動手段とその時間を確定した後は、面談等のアポ入れ、そして、周辺で訪問可能な考古博物館等をサーチする。この作業が結構楽しくて、癖になってしまいそうだ。

初日の4月1日は株式投資家の訪問日@東京である。いつもは、朝から晩までギッシリと5件程のプレゼン、或いは、セミナーが組まれるのだが、今回は1日3件。まったくの「楽勝」である。隙間時間は午前11時半から1時半過ぎ迄の2時間強。目指すのは「北区飛鳥山博物館」である。

最寄り駅は、東京メトロ南北線「西ヶ原駅」。博物館は、そこから徒歩7分の場所にある。午前中2件の株式機関投資家向けプレゼンを終えた後、赤坂で所用を済ませ、溜池山王から12時過ぎの地下鉄に乗車した。西ヶ原駅までの所要時間は19分。12時22分に駅に着くと、すぐに博物館に向かう。初めての場所なので地図で確認しながらの移動となり、博物館前に着くまで10分強を要してしまった。北区飛鳥山博物館は、飛鳥山公園の敷地内にある。都内有数の桜の名所でもあり、公園内は平日のお昼であるにもかかわらず、花見客でいっぱいだった。

北区飛鳥山博物館の外観。博物館がある「飛鳥山公園」が桜の名所である事は初めて現地で知った。天気は残念ながら曇り空であったが、桜は満開に近く、園内は花見客で賑わっていた。

北区飛鳥山博物館の外観。博物館がある「飛鳥山公園」が桜の名所である事は初めて現地で知った。天気は残念ながら曇り空であったが、桜は満開に近く、園内は花見客で賑わっていた。

ここで何故、私が北区飛鳥山博物館を訪問する事になったか事情を説明しよう。弊社Webの主要購読者層は、勿論、金融業界の関係者である。これは『銀行業界鳥瞰図』が依然として、メイン・コンテンツであるためだ。だが、Webのサーチ履歴を確認すると、『縄文土偶探訪記』再開後、土偶、或いは、縄文関係の検索ウェイトが急上昇してきている。現状においては、土偶さん系が3割弱を占めているのだ。

コメントを一切受け付けない「孤高の(身勝手)レポート」スタイルを続けているので、ご意見・お問い合わせの類は、Web上の「お問い合わせ」から寄せられる。氏名、メールアドレスの記入が必須であるためか、真面目な内容がほとんどすべてである。以前、私がお気に入りの「土偶さん眼鏡拭き」の事を『銀行業界鳥瞰図』で書いたら、その製造業者さんからお礼のメールを頂戴した旨を紹介した記憶がある。

実は最近になって、全国各地にある土偶さん(それも無名の)の情報が寄せられるようになってきた。まだ数件ではあるが、本当にありがたいと思っている。ちなみに、私は土偶さん系の情報提供を「どぐたれ(土偶情報のたれ込みの略)」と呼んでおり、「北区飛鳥山博物館」探訪は「どぐたれ1号」を契機としている。どうやら「土偶マニア」と思われる読者の方から「飛鳥山博物館に1体ユニークな土偶が展示されていますよ!」とのメールが3月下旬に届いたのだ。

「立派な施設だなあ~。これって北区が運営しているのかな?」と感心しながら館内に入る。エントランス正面に受付、その後ろにはミュージアムショップが見える。「土偶を見学したいのですが…」と伝えると「常設展示ですね。」との答が返ってきた。観覧料300円を支払い、地下1Fの常設展示スペースへと階段を下りた。

地下と言っても開放感はたっぷり。階段を下り切ると左手に堂々たる復元建物があった。律令時代の米を収めた倉を復元したものだそうだ。この建物の対面に常設展示室が広がる。左手には、常設展示室に入るための受付があり、女性職員さんが2名。入館券を渡した際に、写真撮影の許可をいただく。業務等の目的でなく「趣味」である事を伝えると、すぐに許可がおりた。展示室へ進む。展示の品が醸し出す雰囲気から、このスペースがすぐに石器時代や縄文時代のコーナーである事がわかった。スペース奥の壁には、貝塚の地層らしき展示物と丸木舟のようなものが見えた。共に大型で存在感は抜群だ。自然とそちらに足が向かってしまった。

1F常設展示場の受付奥には「縄文コーナー」が設けられていた。奥の壁にそそり立つ「貝塚の地層」とその手前に鎮座する「丸木舟?」は存在感抜群だった。

1F常設展示場の受付奥には「縄文コーナー」が設けられていた。奥の壁にそそり立つ「貝塚の地層」とその手前に鎮座する「丸木舟?」は存在感抜群だった。

丸木舟の展示ケースの前に立つ。すると、貝塚の地層が展示された壁の左手に、人形らしきものが単独でケースの中に展示されているのが見えた。「あっ、土偶さんだ。」

展示ケース台座から2台の小型のスポットライトが土偶さんのお顔を照らし出していた。ちょっとミステリアスな雰囲気だ。数歩歩いて展示ケースの前に立った。目の前には、これまで土偶関係の写真集や書籍で見た事のない土偶さんが立っていた。解説プレートには、「北区指定有形文化財(考古資料)」「縄文時代後期 東谷戸遺跡出土土偶」と記されていた。さらには「身長は約26cmで、手を広げた端から端までは約19cmを測る。胸の表現があるので女性だが、おなかの膨らみがないことから母体を表していない。再生への祈りをこめた神像として作られたと考えられる。」との解説文があった。

1F入り口から見て「丸木舟」展示ケース奥、左側の壁際に土偶が1体単独展示されていた。周囲を見渡しても土偶さんはこれ1体のみ。これまで見てきた「大型土偶」の中では「スリムさ」が際立つ。

1F入り口から見て「丸木舟」展示ケース奥、左側の壁際に土偶が1体単独展示されていた。周囲を見渡しても土偶さんはこれ1体のみ。これまで見てきた「大型土偶」の中では「スリムさ」が際立つ。

写真を2〜3枚撮影した後、他に土偶の展示がないか周囲を見回した。縄文式土器が数点展示されているのを発見したが、土偶は他には見当たらない。どうやら、北区飛鳥山博物館に展示されている唯一の土偶さんのようである。そうとなれば、この土偶さんを徹底的に鑑賞するしかない。

よくよく見ると、なかなかユニークな土偶さんである。まずは、かなりスリムだ。豊満なイメージの土偶さんが多い中、ウエストにはくびれがあり、足も太くはない。腕を横に開いた形状は、かなりの精度の左右対象である。さらに、何かスカートのようなものを身に付けている事に気が付いた。左右脇から注意深く観察する。最初はお顔かと思ったが、「仮面の女神」や「ウーラちゃん」のように仮面(お面)を被っているようだ。脇から見ると、仮面の角度はかなり上を向いており、まるで月(或いは太陽)でも仰いでいるような感じがした。

土偶さんを脇から撮影。よく見ると、腰にはスカートのようなものを纏い、顔には「仮面」らしきものを被っているのがわかった。何となく「月(或いは 太陽)」を仰いでいるような印象だ。

土偶さんを脇から撮影。よく見ると、腰にはスカートのようなものを纏い、顔には「仮面」らしきものを被っているのがわかった。何となく「月(或いは 太陽)」を仰いでいるような印象だ。

これまで探訪してきた比較的大型の土偶は、私の印象では「据置型」が圧倒的に多いように思えた。これに対して、この飛鳥山博物館の土偶さんは「移動型」或は「携帯型」であるように感じる。1か所に据え置くには安定感に欠ける構造だ。一方で、くびれたウエスト部分は手で握るのにはちょうど良さそうである。また、手を開ひらいてバランスをとっているかのような姿は、何となく「やじろべえ」を連想させる。上から紐で吊したならば、お洒落なオブジェとなるだろう。このように、どれだけ想像の翼を広げても、縄文土偶さん達の「真の役割・用途」は謎のままである。これが縄文土偶探訪の「醍醐味」なのだ。

土偶さんのお顔のアップ写真。ミステリアスな雰囲気である。残念ながらニックネームのようなものは示されていなかった。私は勝手に「飛鳥山のスリムちゃん」と呼ぶ事にした。

土偶さんのお顔のアップ写真。ミステリアスな雰囲気である。残念ながらニックネームのようなものは示されていなかった。私は勝手に「飛鳥山のスリムちゃん」と呼ぶ事にした。

この土偶さん、ニックネームは特にないようだ。私は勝手に「飛鳥山のスリムちゃん」と呼ぶ事にした。スリムちゃんを中心に、縄文、弥生、古墳時代等の常設展示コーナーを約25分鑑賞、北区や荒川に関する展示物をサラッと眺めた後、1F受付の裏手にあるミュージアムショップに向かった。かなりの広さのショップで品数も豊富なのだが、残念ながら「スリムちゃん」グッズが見当たらない。念のため職員さんに確認すると、スリムちゃん他、土偶を紹介した冊子が1種類だけあるとの事。迷わずこれを購入した。これにて、縄文土偶探訪記「北区飛鳥山博物館」編は終了。次の顧客講演に向かうため、私は博物館を後にした。時計を見ると滞在時間は35分弱だった。

「土偶さん1体のみの展示」「写真集・書籍等で見た事のない土偶さんとの対面」そして「どぐたれ1号」である事から、北区飛鳥山博物館訪問は「名も無き土偶探訪」の本当に意味でのスタートと言えるかもしれない。果たして、4月の全国講演の隙間時間で、どれだけの名も無き土偶さんに対面できるだろうか?

トリグラフ・リサーチ 稿房主