探訪博物館: 長野県 市立 岡谷美術考古館
(http://www.okaya-museum.jp/)
探訪日: 2015年4月18日
探訪目的: 「壺を持つ妊婦土偶」さん 他
松本市立考古博物館を午後1時15分過ぎにD4で発ち、次なる目的地「市立岡谷美術考古館」へと一般道で向かった。途中、遅めの昼食を摂り、美術考古館の駐車場に着いたのは午後2時半ちょっと前だった。これまで訪問した考古系博物館のほとんどは、市の中心部から外れた郊外のような場所にあったが、ここは、JR中央線岡谷駅から徒歩で5分程の好立地で、周辺は商店街だった。建物の間口は、これまで訪問した考古系博物館の中では最も狭いように思う。正に「街中(まちなか)の博物館」といった風情である。
道路からちょっと奥まったエントランスを入ると、すぐ左手に受付があった。受付には女性職員さんがひとり。岡谷市出身で、昨年9月に亡くなった現代美術画家「辰野登恵子先生」の追悼展を開催中である旨の説明を受けた。入館料500円(追悼展込み)を支払い、早速、2階の考古展示室へ向かう。考古展示室は、2つの部屋に分かれており、共にゆったりとしたスペースの使い方をしていた。
階段を上がって左側スペースの入り口近い所に「土偶さん」展示コーナーはあった。土偶さん関連の展示品数は23点。「他にもないかな?」と思い、左右展示スペースを2回程サラッと見て回ったが、これですべてだった。
岡谷美術考古館で対面したかった土偶さんは、ズバリ「壺を持つ妊婦土偶」さんである。彼女は、なかなかの有名土偶さんで、「土偶・コスモス(羽鳥書店)」「縄文土偶ガイドブック(新泉社)」共に、カラー写真で紹介されている。実物が、ここに収蔵されている事は、勿論、事前に電話で確認済だ。上掲の写真では、最後列右から2体目にいらっしゃる。独特の雰囲気を醸し出しているので、すぐにそれとわかった。ところがである。目を近づけてよくよく見ると、小さく控えめに「レプリカ」と書かれたプレートが置かれているではないか。はぁ~ 何なんだ!
実物が展示されている事は、数日前に確認したばかりなので、他の博物館への出稼ぎは有り得ない。おそらくどこかに単独展示スペースが設けられているに違いないと思い、直ちに1階の受付へと戻り、先程の女性職員さんに、実物の所在を問うた。すると「2階の土偶展示コーナーにありますよ。」という答が返ってきたのだ(??)。2階の2つのスペースを確認して回ったが、それらしいモノが見つからなかった旨を伝えると、職員さんはすぐにピンときたようだ。「レプリカの側に並んでいる頭や胸、胴体などのパーツが実物なんですよ!」という意外な言葉が返ってきた。ああ、そうなんだ…
2階の土偶さん展示コーナーを再度訪れ、注意深く鑑賞した。ナルホド、レプリカの下に並ぶパーツを組み合わせると「壺を持つ妊婦土偶」さんが完成するのがわかる。自身の早とちりを恥じると共に「この展示方法も有りだな」と、ちょっと感心してしまった。
この土偶さんは「目切遺跡(縄文時代中期)」出土で、岡谷市指定有形文化財となっている。美術考古館のWebには「妊娠した女性をあらわし、豊穣と安産を祈願したものとされる。壷を抱えて腰に手をあてたポーズの完全な姿は、国内でただ一点という貴重な土偶。」との解説文がある。確かに、このタイプの造形はレア物だ。でも、腕がかなり長くて、3本指であるところは、南アルプス市ふるさと文化伝承館の「円錐形土偶さん(https://triglav-research.com/?page_id=12662)」にどことなく似ている。いずれにせよ「かなりの有名土偶さんとの対面」が無事に果たせたわけだ。めでたし、めでたし…
最近の探訪で目にする事が増えてきた「小型土偶」さんも何体か展示されていた。下の写真は、花上寺遺跡出土の小型土偶さんで、岡谷市指定有形文化財である。Webには「高さ4cmの超小型土偶で、小竪穴から完形で出土した。目、口、鼻、手指など細部もしっかり表現されている。」とある。
考古展示室を30分近く見学・堪能した後、1階の美術展示コーナーに向かい、「辰野登恵子先生」の追悼展を5分程鑑賞した。さあ、最後の儀式、ミュージアム・ショップでのお買い物だ。入館料を払う際に、土偶さん系グッズが何点かある事は確認済である。クリアファイル、一筆箋、ポストカード等等を購入。達成感はさらに高まった。
結局、滞在時間は約35分。「縄文土偶」に興味が湧かず、松本市立考古博物館で「土偶満腹状態」になっていた家内が待つD4へと向かった。さあ、次の目的地は「辰野町美術館」だ!
トリグラフ・リサーチ 稿房主