【縄文土偶探訪記 Season 1 Vol.10】再始動「名も無き土偶」の探訪も悪くない!

前回、縄文土偶探訪記⑧をWebに掲載してから、既に10ヵ月以上が経過した。時折、「土偶探訪はやめて(飽きて)しまったのですか?」といった類の問い合わせをいただく。結論から言うと、土偶探訪は続けている。切っ掛けとなった「国宝土偶 かっくうちゃん@函館」以来、今年の2月末までに、全国各地25カ所の博物館・考古館を縄文土偶との出会いを求めて訪問したのだ。実は、その成果である土偶さん達の写真の一部をWebフロントページの右下にタイル状に掲載してある。ランダム表示に設定しているので、結構、楽しめるコンテンツに仕上がっていると思う。

探訪記の「戦利品」とも言える土偶さんのレプリカは、大小様々な22体にまで増えており、事前に用意していた書棚のスペースはちょっと窮屈になってきた。最近では、机上や棚の上などにも「魔除け」として鎮座している。

2月末時点での土偶レプリカ勢揃い! 全22体だ。
2月末時点での土偶レプリカ勢揃い! 全22体だ。

「探訪記Web掲載」が滞った事については、いくつかの理由がある。ひとつは、『銀行業界鳥瞰図』の銀行ネタと一緒に掲載する事に躊躇いがあったからだ(あまりにも内容が異なる)。当初は、別途、趣味用のHPでも立ち上げようと考えていたのだが、業務多忙でそんな事に割く時間が確保できない。そうこうする内に、銀行に関する調査・分析は、マンスリー・レポート方式でしっかり書こうという方向性が固まった。銀行業界鳥瞰図は、弊社Web『トリグラフ・リサーチ稿房のコンテンツのひとつ』という位置付けに変えたので、もう銀行ネタ以外もどんどん放り込んでしまおうと決めた。そう、探訪記休載のひとつめの理由はクリアできたのだ。

ふたつめは、当初の目標であった「国宝・国指定重要文化財土偶17体」の内、14体との対面を昨年5月までに終えてしまった事にある。探訪記⑧配信時点では、残り4体と書いてあるが、5月下旬に、国宝指定に際しての出張から帰った『仮面の女神』と無事にご対面。残った3体の内、2体は「個人」と「お寺」の所蔵で、どう探訪してよいかわからない。もう1体は、千葉県銚子市で出土したものが、何故か兵庫県の博物館に収蔵されており、ここはなかなか訪問する機会がない。要は、予想外に早く「ゴール」に近い状況に到達してしまったのである。

もう国宝や重要文化財なんて関係なく探訪しようと決めて動き始めたのだが、何故か、至る所で「重要文化財指定」という土偶さんに遭遇する。学芸員さん等に「都道府県指定の重文ですか?」と尋ねると、はっきりと「いいえ。国指定です!」という回答が何回か返ってきた。う~ん、よくわからない。別に、土偶の価値を「国宝・重文指定とその他」といったように差別する気は無いのだが、探訪とその後の紹介の「Priority」が、すっかりぼやけてしまい、ペンの走りが止まってしまった。

最後の理由は「ハズレ」が増えてきた事だ。事前に考古館の収蔵資料などをかなり丹念に調べてから訪問するのだが、「他の博物館への貸し出し中」とか「企画展示」或いは「改修工事」のため「常設展示中断中」等の理由で、訪問が徒労に終わった事が3回もあった。折角探訪しても「写真撮影禁止」「Web掲載禁止(或いは要承認)」なんて所もある。国宝や国指定重文では、こんな面倒な制約を課している所は皆無なので、理由がさっぱりわからない。不条理としか言えないが、「名も無き土偶」に対面・紹介する事は「険しい道」である事がわかってきたのだ。どうしよう、土偶探訪から、もう手を引こうか… そんな事を考えながら、博物館巡りを続けていたのだ。

では、何故、「縄文土偶探訪記」の再始動を決断したか。まず「国指定文化財」の謎が解けたのである。「土偶単体」での国宝・国重文指定は確かに17体である。但し、これとは別に「縄文遺跡出土物一体(一群)」としての国重文指定というのが、かなりの数ある事が判明した。そのシンボルとして「土偶」が含まれている事が多く、これらも「広義の国重文指定」なのだ。それに気が付いて、とてもスッキリした。「広義」まで含めれば、まだまだ探訪すべき土偶は、全国各地に散らばっているに違いない新たな目標と楽しみが出来たのである。それに何よりも「縄文土偶」が魅力的なのだ。「名も無き土偶」との遭遇は、険しい道であるが故に、対面が実現し、無事に写真撮影できた時の喜びは一入(ひとしお)である。「ハズレ」を回避するためには、事前に電話確認すればよいだけの事だ。

ここまで、まるで「縄文土偶探訪記」を再開する事について葛藤があったかのような書きぶりであるが、実際はほとんど「弾み・閃き」に背中を押されたに過ぎない。探訪記⑩で詳述するが「3月11日の青空があまりにも綺麗だった事」が直接的な理由である。

さて、新たなスタートを切った『縄文土偶探訪記』。今後は、『銀行業界鳥瞰図』と並ぶメインコンテンツに育て上げていこうと考えている。さらに、銀行業界とはまったく無縁の新たなコンテンツの配信も計画している。トリグラフ・リサーチ稿房における「銀行系ネタ」のウェイトは、これから数ヵ月で3分の1程度にまで引き下げる予定だ。

土偶レプリカの中にぽつんと置かれている アッテンボロー分艦隊旗艦「トリグラフ(Triglav)」 弊社社名の由来となった自由惑星同盟の戦艦である
土偶レプリカの中にぽつんと置かれているアッテンボロー分艦隊旗艦「トリグラフ(Triglav)」弊社社名の由来となった自由惑星同盟の戦艦である。

トリグラフ・リサーチ 稿房主