急速に変わりつつある趣味趣向 ③ — Lovecraft編

9月の中旬に50数回目の誕生日を迎えた。1の位を四捨五入したら「還暦」、10の位ですれば「紀寿」となった。もう間違いなく「人生の終盤戦」に突入している。

前回の八ヶ岳オフィス退社は10月6日だから、もう10日以上も新百合ヶ丘の自宅で過ごしている。

元々、こちらが「自宅」なのだから当たり前なのだが、実はこの間、地方出張がまったくない。厳密には関東圏の地域銀行での講演が2件あったのだが、これは「地方巡業」ではなく「出前講演」と言ってよい程の移動時間であった。

じゃあ何をしていたかというと、ひたすら「東京でのお仕事」が続いている。明日も東京で講演が2件、来週月曜日も同じく東京で2件といった具合に、24日までは東京での仕事がギッシリと埋まっている。3週間近くも東京で仕事が続くなんていうのは、もうすぐ会社設立から8年目を迎える我が社にとって初めての経験である。

早い予定は6月初旬、遅いものでも9月初旬に入ったので、別に「台風19号」の被害を予知して「異例の予定」を組んだわけではない。まったくの偶然なのだが、結果としては「絶妙のスケジューリング」となった。だって、中央道も国道20号も19号の被害で「通行止め」となっており「通勤路」が利用不能な状態に陥ってしまったからだ。

12日~14日の3連休、八ヶ岳オフィスにショートステイする予定であったのを中止したのも正解だった。東富士五湖道路や東名高速を使う「迂回路」なんて地図を見ただけでウンザリするし、台風直後であれば凄い渋滞になる事は容易に予想がつく。ほぼ3週間近くも続く「東京お仕事期間」も、こうなると結果オーライである!

問題は、大嫌いな「電車通勤」が続くことなのだが、実はこれも今回は、それなりに楽しい。往復の小田急線では、毎日、Galaxy Note 9を片手に「小説」を読んでいるからだ。

アナリスト稼業を始めてから31年。この間に読んだ小説は本当に限られている。銀行アナリストになって最初に読んだ高杉良先生の「小説 日本興業銀行」と愛読書3部作 田中芳樹先生の「銀河英雄伝説」、池波正太郎先生の「真田太平記」、司馬遼太郎先生の「坂の上の雲」、そして石黒耀先生の一連の自然災害小説位しか記憶に残っていない。

この他に、海外出張の際に飛行機の中で読むために「厚めの小説」を買うのがかつての習慣だったが、その中で読み直したものはひとつもない。もう、何を読んだかも覚えていないのだ。

荒川じんぺい先生の「森の三部作」やヘンリー・D・ソローさまの「森の生活」は小説ではなく「人生の指南書」と位置付けているし、土屋賢二先生のエッセイは「教養書」だよな。あとは金融関連の専門書ばかりだが、これは書斎やオフィスでじっくり読むのが仕来りなので、通勤時に持ち歩くことは決してない。

じゃあ、今、何には嵌まっているのかって。ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)である。アメリカの幻想小説のパイオニア的な存在なので、ご存じの読者の方も多いだろう。クトゥルー神話」の世界の創始者といった方が早いかな。

Howard Phillips Lovecraft の写真。ダークサイドミステリーで佐野史郎さんが熱く語っていたが、確かに俳優の嶋田久作さんに雰囲気が似ているな…

実は、ラヴクラフトにドップリ浸かるのは我が人生で2度目。最初は確か大学2年~3年の頃だったので、もう38年位前になる。当時、創元推理文庫から出版されていた全集を一気に読んだよな~

その後、Lovecraftとは無縁の生活を送ってきたのだが、9月20日頃に、NHK「ダークサイドミステリー」の再放送を視ていたら「闇の神話を創った男 H.P.ラヴクラフト」なんて内容だった。「へ~、ラヴクラフトか。なんか懐かしいな~」

放送終了後、すぐに楽天Kobo(仕事関係は Amazon Kindle、プライベートはこっち)で検索したら、なんと、創元推理文庫の全7巻がそのまま電子書籍化されているではないか。思わず全集をポチっ。

懐かしいなぁ~ 創元推理文庫の全集だ。7巻の全集が、Galaxy Note 9やiPad Proで気軽に読めるなんて、本当に便利な時代になったな…

以来、電車通勤時の愛読書となっている。ラヴクラフト全集に登場する「異形のもの達」に日々、接している内に、ふと「私が土偶さん達に魅了されたのはラヴクラフトの影響か?」って気がしてきた。

そんなわけで、実は10月1日から【縄文土偶探訪記】スピンオフ版的試みを始めているのだが、これについてオープンにするのはもう少し後にしよう。

令和の時代になって急速に変わりつつある趣味趣向。二十歳の頃の趣向に「回帰(怪奇)」する事もあるんだな…