新顔の土偶さんに出会える喜び — 秦野市 菩提横手遺跡出土の中空土偶さん

1万年以上も続いた「縄文時代」からの使者とも言える土偶さんは、当然ながら、まだ「未発掘」「未発見」の物が数多くあるに違いない。また、発掘・発見されたものの個人や組織が所蔵(秘蔵)しているため。陽の目を見ないままの土偶さんもいらっしゃる事だろう。かく言う私も、オフィスの基礎工事で地面を掘り起こした際に、土の中から土偶さんが現れたらどうしようとドキドキしたものだ(残念ながら、土偶さんは現れなかった…)。

講演活動や旅行の隙間時間活用だったとは言え、私は全国各地の考古博物館を探訪し、国宝や国指定重要文化財指定を受けている有名土偶さんのほとんどにはご対面済みである(https://triglav-research.com/?page_id=20285)。お目にかかれていないのは、個人所蔵等、公開されていない土偶さんなので仕方ない。

当『八ヶ岳稿房』には、わざわざ求む!土偶さん情報】https://triglav-research.com/?page_id=19199)という専用コーナーを設けて、私がまだ知らない土偶さんの情報提供を求めている。コーナーを作ってからの2ヵ月程は、よくメールを頂戴した。だが、その中には、既に訪問(対面)済みの土偶さんが少なからず含まれていた。

よくよく考えれば当たり前の事である。【縄文土偶探訪記】全84本をすべて読み込み、私がご対面済みの土偶さんを除外した上で、未対面の「お宝土偶さん」を紹介してくれる物好きな読者さんなんて簡単にいるはずがない。頂戴したメールの中には「よくぞこれだけ全国を訪問しましたね。メジャーな土偶はほとんど見学済みと思います。」なんてコメントもあった。実際、私もそう思う。

これからの人生、あと何回位、土偶さんとの対面の感動を味わえるのだろうか? 昨晩は、そんな事を考えながら眠りについた。

今日は朝から仕事のためにD4で移動。午後、訪問先からの帰路、ふと思い出した。「そうだ、重要文化財級の土偶さんが秦野で発見されたんだった!」 情報をもたらしてくれたのは三男だった。彼は、土偶ファンでも何でもないが、私が「土偶道」に嵌まっている事は熟知している。

彼の勤務先に近い神奈川県の秦野市で「6月の終わり頃に、すごい土偶が発見されたらしい。」と伝えてくれたのは、7月の第1週半ば頃だったように思う。「ありがとう。すぐに調べてみるよ、展示されるようなら秦野にも行くから。」と伝えて、そのままになっていた。調査を生業とする人間にあるまじき失態である。

夕方、オフィスに戻って、すぐに検索を掛けた。試しに「土偶 秦野」でググってみると、関連情報がズラズラッと並んで表示された。「こんなに大ニュースだったんだ…」 土偶さんファンとしても致命的な失態である。

かながわ考古学財団が、土偶さんの出土を発表したのは6月29日であったが、発見されたのは今年の5月。出土したのは、秦野市「菩提横手遺跡」で、縄文時代後期(3,500年程前)の土偶さんとの事だ。

掲載されていた写真を見ると、これまでご対面した事のない「レア物」のお姿である。そして、「かっくうちゃん」と同じく「中空土偶」である事が判明。

Web上には、菩提横手遺跡出土の中空土偶さんの写真が沢山掲載されていた。土偶さんファンとしては、自身の調査不足を大いに反省するしかない…

さたに、ショックが続いた。検索結果の最上位に示された記事を最後まで読むと「横浜市歴史博物館で7月3~8日、秦野市桜土手古墳展示館で10月23日~11月4日、それぞれ土偶を公開する」と記されていたのだ。

かながわ考古学財団が、この中空土偶さんの事を発表した際のニュースリリースの一部。

しまった(>_<) 7月の公開はとっくに終わっているし、10月下旬までは、この土偶さんに会えないんだ。三男が情報を伝えてくれた時に、すぐに動いていればご対面が出来たかもしれないじゃないか…後悔先に立たずである。

と、ここでちょっと心に引っ掛かるものがあり、かながわ考古学財団のWebを念のために開いてみた。ん?? 何か今日付(8月3日)でニュースリリースが出ているぞ。何だろう? えっ!【2018年8/11~8/26日実施 縄文時代 大形の中空土偶 秦野市立桜土手古墳展示館で展示http://www.kaf.or.jp/2018/08/03/sakuradote/だって。本当に驚きである!

このリリースを見つけた瞬間、今日の午後D4を運転中に、三男の言葉が急に頭に浮かんだ理由がわかったような気がした。土偶さんからのメッセージに間違いないぞ!

土偶さんは、夢に何回か現れたように、私に語りかけてくる。そもそも「かっくうちゃん」との函館での出会いは、まったくの偶然だった。オフィスを構えた場所が、尖石縄文考古館と井戸尻考古館という「八ヶ岳縄文ワールド」のシンボル的存在の2つの考古資料館のほぼ中間地点にあるというのも出来過ぎである。最近は、私が「土偶道」に嵌まったのは「必然」であったと考えるようになっていた。

いずれにせよ、秦野の中空土偶さんには、8月の展示期間中にお目にかかってご挨拶せねばならない! さあ、スケジュールを調整しよう。