「千葉県人」に戻るほんの一瞬—『道の駅 富楽里』でお気に入りを食す

来週の月曜日に東京での仕事を終えた後に、八ヶ岳オフィスに山籠もりし、恒例の「決算分析作業」に没頭する予定だ。

この山籠もり期間中は、雑念を取り払い、澄んだ心で決算短信に対峙し、朝から晩まで財務諸表が発するメッセージを受信し続ける事になる。

旅芸人が「仙人」が如き境地に達する大切な期間なので、その前に雑用の類をすべて終えておく必要があるのだ。そんなわけで、今日は朝の6時半に社主さまとD4で私の実家のある千葉県最南端の町へと向かった。

昨晩は「天国にいるお父さん、お母さん。もう一度話し相手になってください。頭が冴えて眠ることが出来ません…明日はお墓参りに帰ります。」と呟いてから、ベッドへ… 気分は「宇宙戦艦ヤマト」の「古代進」だった。

川崎自宅から千葉の実家までは、東京湾アクアライン経由で距離は約120km。八ヶ岳オフィスよりも35km程短い距離にあるのだが、平日の早朝でも東名や首都高が渋滞するので、所要時間ははるかに長くなる。

今日は、途中、給油とお墓参りの花を買うための立ち寄りがあったため実家に着いたのは9時35分。3時間を超える旅である。八ヶ岳オフィスへの平均出勤時間が1時間50分なので、私にとっては「苦行」だ。

実家前の駐車場では、既に父が支度を整えて私を待っていた。今日は2ヵ月に1度の父の定期検診に付き添うための帰郷である。

ちなみに、昨晩の呟きの「天国」とは「温暖の地 南房総」の比喩であり、「お墓」とは大小6~7基が並ぶ「ご先祖さまのお墓」を意味している。

父の病院やら何やら所用を終えたのは午後2時半過ぎだった。南房総の地で暮らしたのは高校3年までの18年間。八ヶ岳に第2の拠点を置いてから今年で18年目なので、来年には八ヶ岳が第2の故郷、南房総が第3になる。

「故郷」とは本来、「生まれた地」の事を意味するのだろうが、私的定義では「慣れ親しんだ地」だと考えている。第1の故郷は、今年で居住25年目になる「新百合ヶ丘 王禅寺」である。

第3の故郷「南房総」に帰る度に感じるのは「寂れたな…」という思いだ。富津館山道路を下りた後、実家に向かうまでの一般道を走行するとクローズされた(潰れた)商店や飲食店が多いのに驚く。そして、それが確実に増えている。

一方、八ヶ岳周辺(諏訪地区)では、そんな強烈な「寂寥感」のようなものを感じた事は無い。往事の隆盛はないものの、やはり「世界に冠たる精密機械産業」を有する諏訪地区と、半農半漁と観光に頼る生まれ故郷との違いであろうか…

かつては、千葉の実家に帰る際には、高校の頃まで通った「懐かし(お好み)の飲食店」を訪れるのが楽しみだった。だが、そんな先も店仕舞いや代替わりがここ数年加速して、自然と足が遠のくようになってきた。

そんな私が、必ず立ち寄る場所がある。『道の駅 富楽里 とみやま(http://furari.awa.or.jp/)』、その中でも2Fにあるふたつのお総菜屋さん「青倉商店」と「菜の花」が超お気に入りだ。

道の駅「富楽里」の1Fエントランス。富津館山道路に乗る前はここから入る事になる。1Fは、直売・物産コーナーで、社主さまはここで、野菜、花、海産物等を胃買い物する。もう開業15周年なんだ。早いものだな…
2Fの私と社主さまお気に入りのお総菜屋さん。右が「青倉商店」、中央が「菜の花」である。扱っているお総菜の数は多くて、千葉県外の人には珍しいものが多いだろう。

ほとんどの場合、食事や買い物のために実家への行きと帰りに2回立ち寄る。私は、数あるお総菜の中でも「イワシダンゴ(鰯団子)」「つみれ汁」「さんがおにぎり」が大好物で、「売り切れ」のケースを除けば、これらを食べない事は皆無だ。

今日は、往路で、朝食にサンドウィッチを食べたにもかかわらず、お墓参りの花を買うついでに「イワシダンゴ(170円)」を1串食した。隣では社主さまが大好物のつみれ汁を食べていた。

今日の往路で食した「イワシダンゴ(菜の花)」。他の地域でも食べた事はあるが、歯ごたえと味は、やっぱりこれがダントツである。魚臭さはほとんど無いのが不思議だ。

復路は午後3時前に富楽里着。勿論、昼食は済ませていたが、私は誘惑に耐えられず「つみれ汁(200円)」と「伏姫さんがおにぎり(180円)」をぱくついた。

復路では、つみれ汁(菜の花)とさんがおにぎり(青倉商店)を昼食後であるにもぺろっとたいらげてしまった。つみれ汁は両店が扱っているが、今日は「菜の花」の方を選んだ。どちらも美味だ!

イワシダンゴとつみれ汁は南房総固有の郷土料理ではないが、さんが(焼)は正真正銘の地元料理(おふくろの味)で、子供の頃から慣れ親しんでいる。

既に、心情的には8割程度が「長野県人」である私が、ほんのちょっとの間「千葉県人」に戻るのが、この「富楽里」で地元のお総菜を味わう瞬間だ。

大学生になって多摩市でひとり暮らしを始めた時(もう38年前か…)、東京のスーパーで売っていた鮮魚が不味(まず)くて驚いた事を思い出す。

その後、物流網の劇的な発達により、現在では「山国 長野」でも新鮮な魚介類を味わえるようになったが、「やっぱりお魚系は千葉(南房総)が1番だな…」なんて不似合いな「郷土愛」に目覚めてしまう。

富楽里の2Fから見る周辺の山々。八ヶ岳オフィスは標高1,300m、八ヶ岳中腹にあるので、房総の山々は「丘」にしか見えない。

さあ、これで「決算分析山籠もり」に向けた「エネルギー充填120%」だ!

今日は『稿房通信』における「禁断グルメネタ」をお送りしました。