土偶さん、ツリーハウスよりも面白いもの見~つけた!

9月17日、台風18号襲来前に「トリグラフ八ヶ岳西麓気象観測所 臨戦態勢」ネタを配信してから稿房通信を10日以上も休稿としてしまった。台風被害によって配信不能となったわけではなく、銀行アナリストとしての創作意欲を刺激される「最高の素材(ネタ)」に出会い、そのデータベース構築と分析作業に、この間、熱中していたからだ。

正直なところ、土偶さん、ツリーハウスなどよりも(現時点では)全然面白いと感じる! 2016年前半、FinTechに知的好奇心を刺激され、その深みにドップリと嵌まってしまった時に匹敵する程の興奮を覚えた。その素材は「議決権行使結果の個別開示情報」である。

「議決権行使結果の個別開示情報」は、銀行アナリストとしての知的好奇心を大いに刺激してくれた。「宝の山」であり、ガバナンス構造改革の進展を再認識させられた。

7月下旬からパラパラと始まった2017年6月開催の株主総会に対する議決権行使状況の開示については、その存在を意識はしていたものの講演活動が多忙で分析までに手が回らなかった。銀行に関する新たな公開情報が提供された場合、遅くとも3ヵ月以内にデータベースと分析の枠組を構築し、その後は継続的にメインテナンスしていくというのが弊社(と言うか私)の基本方針である。

「議決権行使結果の個別開示」については、10月末を目途と考えていたのだが、台風18号襲来の日に、ちょうど暇だったので「信託銀行開示分」から着手。某信託はExcelのワークシートでデータを開示してくれたので、それを基本の枠組として活用。丸1日掛けて、独自のデータベースのフォーマットを作成した。

ちなみに2017年3月末の銀行セクター全体の普通株式の保有比率は、第1位が「外国人」の26.6%、第2位が「事業法人・その他の法人」の25.5%、これに次ぐのが第3位「信託銀行」の19.5%だ(信託銀行保有分の内、投資信託が4.6%、年金信託が1.4%、指定単その他が13.5%となっている)。したがって、存在感の大きい信託銀行のデータベース化から着手するのは合理的なのである。そして、データベースフォーマット作成以降は、自然の成り行きでデータの整理・分析に作業に熱中してしまった。

2017年6月開催の株主総会において、上場銀行・持株会社が提案した議案数(会社側提案のみ)は1,171。これに対しての、まずは信託4行(三井住友信託・三菱UFJ信託・みずほ信託・りそな銀行)の議決権行使状況(賛成・反対)を色分けして一覧表にし、特記事項(理由等)を加えた。この段階で、4行合算の反対議案数が434に達した事に驚く(事前には、4行合わせても200に満たないだろうと思っていた)。対象議案数に対する反対票比率は9.8%だ!

こうなると、どんな銀行のどんな議案が「反対(No)票」を投じられたかに興味が湧くのは当然である、そこで、全行の「株主総会招集通知」をダウンロードしてデータベース化。さらに個別議案と信託銀行の議決権行使(賛成 or 反対)の突き合わせ作業を行った。項目別では「取締役選任」に係る反対が圧倒的に多い。個別行では、4行すべてから何らかの反対票を投じられ、総議案の半数近くまでを反対とされた銀行もある。これが「個別開示情報」分析の醍醐味である。

信託銀行の「物言う株主化」は、私の事前の想定を上回っており「ガバナンス構造改革」が着実に進んでいる事を再認識。やはり「個別開示」の意義は極めて大きいと実感した。さらに興味を覚えたので「世の中お騒がせ企業」に対する議決権行使状況にまで手を伸ばしてしまった(こうなると完全に脱線)。

勿論、データの整理・分析は、講演や東京でのお仕事があるので、その隙間時間を使って作業を続けた。そして、昨晩、とりあえずは信託4行を対象とした分析の枠組とプレゼン用資料が完成\(^o^)/ これからは、主要な投資顧問会社や保険会社等の個別開示状況を加えるという「楽な作業」に移行。保険会社は非開示の先が多そうなので、まあノンビリと取り組めばよいと考えている。

こんな具合に「世の中の大いなる変化」を実感できると、「飽き気味」であった本業に対する意欲が一気に回復してくる。今年の10月末で弊社は設立から丸5年、12月末には開業丸5年となる。新しいビジネスサイトの立ち上げは多忙ゆえに「放置状態」にあったが、当分は趣味サイトである「稿房通信」の方を手抜きして、本業の方に時間と資源を集中しようかなとも考えている。まあ、明日になればまた気が変わるかもしれないが…

「伊達と酔狂」でやる仕事とは、そういうモノなのである!