樹の家への途(番外編)@白老ポロトコタン

ツリーハウスへの憧れや想いは日に日に募っている。縄文土偶探訪のように「見て感動する」といった受動的な興味ではなく、八ヶ岳の建設予定地にどんなツリーハウスを自分の手で建てようかという極めて「能動的な欲求」である。

これまで見学した計9軒のツリーハウスは、それらの造形(外見の美)を楽しむだけで、どれも中に入る事は出来なかった。そのため、実際にツリーハウスを建築するための知見を得るという観点からは、ほとんど成果は無し。何事も目的適合性に重きを置く私は「見て楽しむためだけにツリーハウスを訪問するのは意味がない!」という結論に早々と至ったのである。そんなわけで、今回の役員慰安旅行については、ツリーハウス関連の予定はまったく組まなかった。

だが、旅行3日目(9月8日)に「白老ポロトコタン アイヌ民族博物館」を訪れた際に、ちょっと心惹かれる構造物に偶然出会ってしまったのだ。敷地内に建てられていた「プ(食料庫)」「ヘペレセツ(熊檻)」である。遠目に見た時は、「ん? 低い位置にあるツリーハウスか?」と思った。

向かって右側が食料庫の「プ」、左側が熊の檻となる「ヘペレセツ」である。遠目に見た時は、低い位置に2軒のツリーハウスが並んでいるのかと思った。実際は、4本のカットした丸太を足(基礎)とする「高床式構造物」であった。

近付くと、4本の丸太を足とした「高床式構造物」である事がわかった。ツリーハウスの「定義」は様々だが、一般的には「生きた樹木を建築上の基礎として活用する構造物(人用の家屋)」とされている。色々な文献を調べてみると、この「生きた樹木」という部分が重要であるらしい。

「プ」も「ヘペレセツ」も丸太をカットして基礎としているので、この定義に照らし合わせればツリーハウスではない。これまでに見学した中では「空飛ぶ泥舟https://triglav-research.com/?p=18772)」もツリーハウスには該当しない事になる。

でも、私からすれば「定義」なんて実はあまり重要ではない。要は、建設予定地である約100坪の三角地の樹木を上手く活かして、お洒落な小屋を建てる事が出来れば良いのだ。そして、その中でノンビリと読書や昼寝が出来て、ちょっと高い位置から八ヶ岳本宅&オフィス敷地内を珈琲でも飲みながら眺める事が出来れば大満足である。

本宅とオフィスという2軒のログハウスを構えているので、寝泊まりする気などは毛頭ない。「ゲゲゲの鬼太郎の家(ゲゲゲハウス?)をシンプルにした茶室みたいなのがいいなぁ~」なんて事を考えていたので、高床式構造物とは言え、ツリーハウスの趣を漂わせた「プ」と「ヘペレセツ」の清々しいシンプルさにグッときたのである。

「プ」の外観。ゲゲゲの鬼太郎の家をさらにシンプルにしたイメージ。近付いて構造をジックリと観察する事が出来た。

ゲゲゲハウスに似たのは「プ」の方であるが、「ヘペレセツ」の方も単純で力強い造形に心惹かれる。ヘペレセツのように隙間のある外壁を4X4材や2X6材等で六角形に組んで行くとお洒落かなぁ…などと思わずイメージしてしまった。

こちらは熊の檻となる「ヘペレセツ」。武骨で荒々しいが、私はお洒落だと感じた。だが、私がこの中にいたら、社主さまは「性格の悪い熊が檻に閉じ込められている」と言ってからかうに違いない!

ん? 隙間のある外郭。そうか、小諸ツリーハウスプロジェクトのお気に入りである『間』もそんな構造だったな。ヘペレセツの「武骨な荒々しさ」に対して、『間』は「洗練された優雅さ」が魅力だが、建物としての根っこの部分には同じような思想があるように感じる。

こちらは小諸ツリーハウスプロジェクトにおけるお気に入りの『間』である。スマートで洗練された本当に美しい造形だ。ヘベレセツとは対極的なツリーハウスであるが「隙間の美」という意味では、相通ずるモノがある。

トリグラフ・リサーチのツリーハウスも「隙間の美学」に挑戦しようかな… 業務多忙でツリーハウスの建築に時間を割く余裕などないのだが、こんな具合に構想だけは着々と進んで行く。