【縄文土偶探訪記 Season 4 Vol.10】 長野県『塩尻市立平出博物館』

探訪博物館: 長野県 塩尻市立平出博物館
(http://www.city.shiojiri.lg.jp/tanoshimu/hakubutukan/hiraidehakubutukan/index.html)
探訪日: 2017年3月28日
探訪目的:鯨面土器、入れ墨とイヤリングを纏った土偶さん他

3月最後の週末は、講演の合間に八ヶ岳オフィスに家内と滞在した。25日(土)から27日(月)までの3日間は、4月の講演資料の大幅な改良・組み替えのために休日も含めて仕事に没頭。作業は順調に進んで、27日午前11時の時点で、残すは3月期末データ確定待ちの定番資料数枚のみとなった。そこで、28日は代休日として、奈良井宿http://www.naraijuku.com/narai/)等、塩尻市界隈を家内と観光する事にした。

中山道の宿場町のひとつであった奈良井宿の散策を終えた後に向かったのが「塩尻市立平出博物館」である。「平出博物館」の探訪は、2015年8月27日以来であり、今回が2度目となる。

本来ならば、【縄文土偶探訪記 Season 2】で紹介を終えておくべき先なのだが、所謂、「お蔵入り状態」となっていた。実は、今年1年掛けて、蔵出しプロジェクトを遂行するに際して、2つの対応策を定めた。ひとつめは、旅行や講演の際の比較的長い空き時間を利用して訪問した「再探訪困難先」の扱いであり、探訪時の記録と記憶を頼りに紹介文を綴る事にした。

ふたつめが「再探訪容易先」だ。八ヶ岳オフィスや川崎自宅周辺の博物館や各地の県立博物館などドライブや講演のついでにふらっと立ち寄る事が可能な先なので、2回目や3回目の探訪をSeason 4において紹介すれば良い。Season 4 Vol.4の「長野県立歴史館」が後者のケースに相当する。そして、「平出博物館」はその第2弾なのだ。

平出博物館着は午後1時42分。ちょっと離れた駐車場にD4を置き、博物館に向かう。周囲の道にはまだかなりの雪が残っていた。博物館はエントランス側から見るとやや小ぶりに感じるのだが、奥行きが広い構造で中に入ると予想していた以上に広い展示スペース(2階建)が広がっている。これは、前回探訪時に経験済みである。

エントランスサイドから撮影した平出博物館。奥に広い構造で中に入ってから、展示スペースの予想外の広さにちょっと驚く。

エントランス脇の受付で入館料300円を支払って探訪開始だ!展示スペースは「平出遺跡展示室」、平出の「原始」「古代」「民俗」に4区分されており、この内、縄文土偶サンにお目にかかれるのは「遺跡展示室」と「原始」である。

まず、エントランス左手奥に位置する遺跡展示室に向かう。探訪先を発掘するために、Webで「遺跡」を検索すると、時々、『日本3大遺跡』という表現を目にする事がある。この「3大」には諸説があるようだが、『吉野ヶ里遺跡(佐賀県)』『登呂遺跡(静岡県)』、そして当地『平出遺跡(長野県)』とする説が有力なようだ。ちなみに、博物館の周辺には、平出遺跡公園が整備されている。

遺跡展示室の土偶さん達は、25個のスペースに仕切られたお洒落な展示ケースの中に並んでいる(前回探訪時と変わっていない)。実に様々な表情をしており、ひとつひとつジックリと眺めた。個別に写真撮影したのは言うまでもない。

平出遺跡展示室の土偶さん展示コーナー。25個のスペースに区分したお洒落なケースである。前回探訪時に最上段向かって右から2番目の土偶さんを模したペーパーウェイトを購入。オフィスでとても重宝している。

どれかひとつを抜き出すのは不公平なので、全体像の写真を紹介する事としよう。

遺跡展示室を7~8分鑑賞した後、エントランスの正面奥にある通路を移動して「原始」スペースへ。展示試料数は、遺跡展示室280点に対して、原始は640点と大きく増える。展示スペースの右手奥に「土偶さん」や「獣(猪?)面付土器」等が種類毎にまとめて展示されている。

こちらの土偶さん達は、何となく「安らかな表情」をなさっているような気がする。

「原始」展示スペースに並べられている土偶さん達。ニッコリと微笑む表情の土偶さんが多く、癒やされる。

単独展示されている土偶さんのお顔も同系統だ。なんとなく「亀」のように見えるのは、私だけだろうか? 「癒やし系土偶集団だな」と思わず呟いてしまった。

こちらは「原始」コーナーで単独展示の縄文中期の土偶さん。出土元は不明との表記あり。亀みたいだなと感じたのだが、よくよく見ると E.T.にも似ている。

順路に沿って展示スペースを逆時計回りすると、9時の方向に「鯨面付土器」なる超レア物が登場。こちらは縄文時代ではなく「弥生時代前期」の物であるが、前回探訪時にそのユニークな造形に見とれてしまった。何で日本列島の中央とも言える「塩尻」から鯨のお顔の土器が出土したのだろうか? 考え出すとキリがないので、鑑賞に集中する事とした。

インパクト抜群の「鯨面付土器」。何で本州のど真ん中のような場所で、鯨面なのかよくわからない。それがミステリアスでまた良い。

20分程かけて、「原始」と「古代」スペースを堪能。展示スペース内をぐるっと1周してくると出口付近に大きめな土偶さんが待ち構えていた(これも前回探訪時と同じ)。

入れ墨にイヤリングを纏った、お洒落な、かなりの大型土偶さん。左胸から腕にかけてパーツがないのが残念だ。でもやっぱり、看板娘的存在なのだろう。

こちらの土偶さん、かなりの大型で存在感は抜群なのだが、残念なことに、左胸から腕にかけてパーツが欠けている。入れ墨を施し、耳にはイヤリングを付けている事が確認できるお洒落なお嬢さんなので、ちょっと残念だ。

全身のパーツが揃っていて、可愛い愛称でも付ければ、博物館の看板娘になっていたに違いない。鯨面土器とコンビを組ませて「鯨子(けいこ)と墨恵(すみえ)」なんてレトロなコンビ名にしたら、昭和世代の考古オタクにウケそうな気がする。

こんな感じにトータル30分程の探訪を終え、再びエントランスに戻った。小さいけれどミュージアムショップがあり、ここで展示物関連の冊子と古代住居を模したペーパーウェイトを購入。

前回の探訪時に土偶さんの頭部(遺跡展示室の25個のショーケースのひとつ)のペーパーウェイトを買ったのだが、これが使い勝手が良く、八ヶ岳オフィスの机上で活躍している。古代住居の方は川崎自宅の書斎で使おう。

こうして、蔵出し作業のための2度目の平井博物館の探訪は無事に終了。充実した展示物の数々に大満足。やはり、長野は『縄文王国』だなあと実感した。

天気がちょっと怪しかったが、遺跡公園を散策しようかなと思案していたところ、家内が突然「私は、茅野の国宝さん達に会ってないわ。」と言い出した。私的には、尖石と井戸尻の両考古館は気軽に訪れる先なのだが、確かに家内と一緒に行った記憶が無い。そんなわけで、急遽、国宝土偶さん2体が鎮座する『尖石縄文考古館』を次なる目的地に決定!

私の一番のお気に入りである「仮面の女神」との久々の対面に胸が高鳴った。

トリグラフ・リサーチ 稿房主
【縄文土偶探訪記】