【縄文土偶探訪記⑪】— 韮崎市民俗資料館(山梨県)

山梨県立考古博物館の探訪の4日後、3月15日(日曜日)の午前中に、私は山梨県下の3つの考古系博物館を探訪する事を計画。目標は、県立考古博物館「土偶コーナー」最後列に並ぶ大型レプリカ土偶3体(上野東京国立博物館の猫顔土偶以外)の本物(現物)との対面である。

八ヶ岳オフィスをD4で発ったのは午前8時ちょうど。オフィスから10分弱の距離にあるセブンイレブン 小淵沢IC店に立ち寄り、D4車内で朝食を摂りながら行程を組んだ。3つの考古系博物館を効率的に探訪し、正午までにオフィスに戻るためには、開館時間が 午前9時と早い「韮崎市民俗資料館」を最初に訪問するのがベストと判断。一般道で同資料館に向かった。

コンビニから要した移動時間は約35分。開館時間より少し早い8時55分に到着した。駐車場から資料館の建物を写真撮影していると、女性職員さんが出てきて 「もう入館できますよ(標準語変換済み:以下共通)。」と声を掛けてくれた。館の入り口で氏名等を記入し、そこでこの資料館がNHK朝ドラ「花子とアン」 のロケ地のひとつであった事を知る。

韮崎市民俗資料館の外観。NHK朝ドラ「花子とアン」の ロケ地のひとつであったとの事。約25分間の滞在時間中 見学者は私ひとりで、正に「貸し切り状態」を楽しめた!
韮崎市民俗資料館の外観。NHK朝ドラ「花子とアン」のロケ地のひとつであったとの事。約25分間の滞在時間中見学者は私ひとりで、正に「貸し切り状態」を楽しめた!

職員さんからの「ロケ地の見学ですか?」との問い掛けに「いいえ。土偶です。」と答えると、「じゃあ2階。照明付けるからちょっと待ってね。」と簡潔で心地良いやりとりをする。ちなみに入館料は無料。1F入り口の右脇では「ミス石之坪遺跡」とネーミングされた私の身長(174cm)位はありそうな大型の土偶さん模型(像)が出迎えてくれた。1Fで案内資料等を入手後、階段を上って2階展示室へと向かう。

1F入り口で出迎えてくれたのは「ミス 石之坪遺跡」の 大型模型。事前調査からは漏れていた土偶さんであり 予期せぬ出会いへの期待が一気に高まった。
1F入り口で出迎えてくれたのは「ミス 石之坪遺跡」の大型模型。事前調査からは漏れていた土偶さんであり、予期せぬ出会いへの期待が一気に高まった。

「民俗資料館」との名の通り、縄文時代の土器、石器といった「考古資料」と明治・大正期等の農機具・生活用品等の「民俗資料」が混在して展示されていた。展示品総数は資料によると約600点との事。展示スペースは、これまで訪問した考古系博物館の中では、おそらく最も狭い。資料の展示方法もどちらかというと雑 然としたイメージなのだが、なぜかちょっと懐かしく、好感を抱いてしまう資料館である。

10分程かけて2階展示室全体を見て回る。お目当ての土偶さん達の展示スペースを確認した上で「土偶鑑賞モード」に移行した。メインターゲットは「山梨県立考古博物館 土偶コーナー最後列 右から2番目の仮面土偶さん」である。彼女は、土偶コーナーの右奥のスペースで、堂々と胸を張って存在感を示していた。尖石の国宝「仮面の女神」と体型はよく似ているのだが、なぜかこちらのお顔は「ニッコリ」していて愛嬌がある。仮面の女神のミステリアスな雰囲気とは大違いだ。もしかすると「仮面の女神」の派生(デリバティブ)土偶かもしれないなと勝手に推測する(学術的根拠はない)。

後田史跡出土の「ウーラちゃん」。「縄文の仮面小町」という呼び名もアバンギャルドでカッコイイぞ! 体型は国宝「仮面の女神@尖石」によく似ている。
後田史跡出土の「ウーラちゃん」「縄文の仮面小町」という呼び名もアバンギャルドでカッコイイぞ!体型は国宝「仮面の女神@尖石」によく似ている。

ちなみにこの土偶さんの愛称は「縄文の仮面小町 ウーラ」との事。韮崎北東小学校に近い後田(うしろた)遺跡から発掘されたので「ウーラ」なのだろうと再度、勝手に推測した。ウーラちゃんは、日本の縄文土偶代表として「大英博物館」に展示された事もある有名土偶なのである。これで、県立考古博物館3大レプリカ土偶の本物1体目の対面を果たした事になる。

韮崎市民俗資料館から大英博物館への海外出張経験がある土偶さんはもう1体ある。入り口で大型模型が出迎えてくれた彼女である。愛称ではなく「日本一の美肌&美メークアップ土偶」として紹介されていた。ウーラちゃんは、他の出土品と一緒(共用)のケースの展示だったが、こちらは「単独展示」で「さわらないようにお願いします。」の注意書き付。VIP待遇である。

ミス 石之坪遺跡の本物。ちょっとツンとした感じの 美人(美顔)土偶である。ウーラちゃんとミス石之坪 は、大英博物館への海外出張経験のある有名土偶さんだ!
ミス 石之坪遺跡の本物。ちょっとツンとした感じの美人(美顔)土偶である。ウーラちゃんとミス石之坪は、大英博物館への海外出張経験のある有名土偶さんだ!

顔がピカピカに磨かれ、細い線で模様が描かれているとの解説も付されていた。細い線の溝には「赤い塗料」が塗られていたそうで、正に「美肌&美メークアップ」が施されていた事になる。単独展示であるが故に、この土偶さんは様々な角度から観賞できた。正面だけでなく、実は横顔もとっても美しい土偶さんだ。「ミス 石之坪遺跡」という肩書きは的を射ている。

ミス 石之坪の横顔。ショーケースのガラス反射で写真の 出来が今イチなのがちょっと残念だ。横顔も間違いなく 美人さんであり、予期せぬ対面に大満足した!
ミス 石之坪の横顔。ショーケースのガラス反射で写真の出来が今イチなのがちょっと残念だ。横顔も間違いなく美人さんであり、予期せぬ対面に大満足した!

ウーラちゃんとミス 石之坪を中心に約15分程、土偶さん達をジックリ鑑賞。トータル約25分の鑑賞を終え、1F受付前に戻る。通常であればここで「最後の儀式(土偶グッズの記念購入)」となるのだが、残念ながらミュージアムショップは併設されていなかった。職員さんに無料見学のお礼を伝え、D4が待つ駐車場へと向かった。

ウーラちゃん目的で訪問した韮崎市民俗資料館だが、ミス 石之坪遺跡との予期せぬ出会いという大収穫もあった。こんなサプライズもあるので「縄文土偶探訪」はやめられない!

トリグラフ・リサーチ 稿房主
探訪日:2015年3月15日(日曜日)

『縄文土偶探訪記』 Vol.11